「牛すじを煮込んだら臭みが残った」「ゆでこぼしの時間が分からず、つい長くゆでてしまった」「下処理の工程が多くて途中で挫折した」——牛すじの下処理は、手順だけでなく理由まで押さえないと失敗しやすい工程です。牛すじは腱の部位で、煮込んだときに浮くアクは約8割が脂質、12〜20%がたんぱく質(広島大学の研究)。水で洗うだけでは落ちず、加熱して湯ごと捨てる「ゆでこぼし」が必要になります。
本記事では、日本畜産副産物協会(JLBA)の資料やエバラ・NHKきょうの料理の公式レシピ、農林水産省の食品安全の目安をもとに、「下茹で→ぬるま湯で洗う→カット」の3ステップと、生・ボイル済み・冷凍の状態別の下処理を整理しました。精肉の現場で行われている手順に沿って解説します。
- 牛すじは運動量が多い部位(赤身肉より独特の臭みがある)
- 臭みの正体は血液やリンパ液の成分(加熱によって変化して臭みになる)
- 「ゆでこぼし」で湯ごと捨てるのが基本(最初の湯にはアク・臭み・余分な脂が溶け出している)
牛すじの下処理が必要な理由
牛すじを買ったのはいいけれど「臭みが心配」「洗えばいいのかな?」と迷ったことはありませんか。牛すじはコラーゲンたっぷりの人気部位ですが、下処理をしないまま煮込むと、せっかくの料理が台無しになってしまいます。
牛すじの下処理は、「下茹で(ゆでこぼし)→ ぬるま湯で洗う → カット」の3ステップが基本です。この記事では、NHKきょうの料理やエバラなどの公式レシピ、肉屋の実践、食肉の科学の視点から、臭みなくトロトロに仕上げる下処理の方法を整理しました。生・ボイル済み・冷凍の状態別の手順もご紹介しますので、買った牛すじの状態に合わせて確認してみてください。
赤い濁りは「血」ではない
牛すじを水にさらすと赤い濁りが出ますが、これは「血」ではありません。牛すじは腱(けん)という結合組織で、筋肉を骨につなぐ役割をしています。この赤い色の正体は、ミオグロビンという筋肉に含まれるたんぱく質と、筋漿(きんしょう)と呼ばれる筋繊維のまわりにある液状のたんぱく質です。
日本畜産副産物協会(JLBA)の資料でも、牛すじは腱の部位であることが示されています。血液そのものではなく、たんぱく質が水に溶け出して濁りとして見えているのです。つまり「血を落とすために洗う」という考え方は正確ではなく、水にさらすだけではこれらのたんぱく質は十分に落ちません。
では、なぜ下茹でが必要なのでしょうか。たんぱく質は加熱すると固まります。ゆでこぼしをすると、濁りのもととなるたんぱく質が加熱によって固まってアクとなり、湯と一緒に捨てられるのです。洗うだけでは落ちない成分を、加熱して取り除くのが下処理の第一の目的です。
アクの約8割は脂
牛すじをゆでると、表面に白っぽいアクが浮いてきます。このアクの正体について、広島大学の研究ではアクの約80%が脂質、12〜20%がたんぱく質であると報告されています。アクの主役は「血」ではなく「脂」なのです。
牛すじは腱のまわりに脂肪がついていることが多く、加熱すると脂が溶け出してアクとなります。脂は水に溶けないため、水で洗っただけでは落としきれません。また、アクを放置すると脂の酸化が進み、不快な臭いのもとになることも広島大学の研究では指摘されています。
この研究では、加熱中にこまめにアクを取る方が、仕上がりの評価が高いという結果も出ています。つまり、アクは「取らなくてもいいもの」ではなく、臭みを防ぐために積極的に取り除くべきものです。ゆでこぼしでアクを湯と一緒に捨てるのは、脂とたんぱく質を効率よく除去する理にかなった方法なのです。
牛すじの下処理の基本
牛すじの下処理は特別な技術を必要としません。手順を覚えてしまえば、誰でも確実に臭みのない牛すじに仕上げられます。ここでは基本の3ステップを詳しく解説します。

ステップ1: 下茹で(ゆでこぼし)の手順
まず鍋に牛すじと水を入れ、火にかけます。ポイントは水から加熱することです。熱湯にいきなり入れると表面だけが固まり、内部の臭み成分が出にくくなります。水からゆっくり加熱することで、牛すじ全体が均一に温まり、アクや臭み成分がしっかりと湯に溶け出します。
沸騰したら、そのまま5〜10分ゆで続けます。エバラの公式サイトでは5分、NHKきょうの料理では10分が目安とされています。軽い仕上げでよい場合は1〜3分という流儀もあり、白ごはん.comでは1分、Nadiaのレシピでは2〜3分としています。臭みや脂が強いと感じる場合は、10〜15分まで延長しても構いません。
ゆで終わったら、この湯はすべて捨てます。ここで捨てる湯には、アクや臭み成分、余分な脂が溶け出しています。せっかくの牛すじのうまみも少し抜けますが、この1回のゆでこぼしが、その後の仕上がりを大きく左右します。
ステップ2: アク取り
ゆでこぼしが終わったら、牛すじを流水で洗います。このとき使う水はぬるま湯(40℃前後)がおすすめです。冷水を使うと、牛すじの脂が固まってしまい、表面にまとわりついたアクや脂が落ちにくくなります。
ぬるま湯の温度は、手で触って「ほんのり温かい」と感じる程度で十分です。ボウルにぬるま湯を張って、牛すじを入れて軽くもみ洗いする方法が簡単です。表面についた白っぽいアクや脂のかたまりが、ぬるま湯で洗うとスルッと落ちていきます。
洗い終わったら、ざるに上げて水気を切ります。このとき、ぬるま湯で洗うのは「アクや脂を落とす」ためであって、「臭みを消す」ためではないという点を押さえておきましょう。臭みの主成分は加熱によって湯に移っているので、洗いすぎる必要はありません。さっと洗う程度で十分です。
ステップ3: カット
下茹でと洗いが終わったら、食べやすい大きさにカットします。3cm前後が食べやすい大きさの目安です。スーパーで販売されている牛すじは、日本畜産副産物協会(JLBA)によると約5cmにカット済みで流通していることが多いので、その場合は半分に切ると3cm前後になります。
カットのタイミングは、牛すじが触れる程度に冷めてからがおすすめです。熱いうちに切ると形が崩れやすく、やけどをする危険もあります。下茹でした牛すじは少し弾力がありますが、包丁で切りやすい硬さになっています。
カットしたら、このまま煮込みに使えます。下処理が完了した牛すじは、すぐに料理に使うのが基本です。使わない場合は、冷蔵または冷凍で保存します。
下処理の基本3ステップをまとめると、以下の通りです。
| ステップ | 作業内容 | 時間の目安 | ポイント |
|---|---|---|---|
| 1. 下茹で | 水から加熱し、沸騰後5〜10分ゆでる | 10〜15分 | ゆで汁は全部捨てる |
| 2. アク取り | ぬるま湯(40℃前後)で洗う | 2〜3分 | 冷水だと脂が固まる |
| 3. カット | 3cm前後に切る | 3〜5分 | 冷ましてから切る |
牛すじのゆでこぼしの時間と回数
「牛すじは長くゆでないと臭みが取れないのでは?」と心配する方も多いですが、ゆでこぼしの時間は5〜10分で十分です。ここでは、その理由を詳しく説明します。
ゆで時間の根拠
ゆでこぼしの目的は、あくまでアクや臭み成分、余分な脂を湯に溶け出させて捨てることです。沸騰してから5〜10分もゆでれば、表面のアクは十分に出切ります。エバラの公式サイトでは5分、NHKきょうの料理では10分を目安としており、この時間でアク抜きは完了します。
ここで誤解されがちなのが、「長くゆでれば柔らかくなる」という考え方です。牛すじの柔らかさは、コラーゲンがゼラチンに変わることで生まれますが、ゼラチン化は本煮込みの工程で起こるもので、ゆでこぼしの5〜10分ではほとんど進行しません。アク抜きと柔らかくする工程は別物です。
本ゆで(柔らかくする工程)には、白ごはん.comやNadia、NHKきょうの料理のレシピでも1.5〜2時間が必要とされています。普通鍋で2〜3時間かけるレシピもありますが、この詳細は牛すじ煮込みのレシピの記事で解説しています。ゆでこぼしの段階で長くゆでても、時間の無駄になるだけでなく、うまみまで逃がしてしまうのです。
1回で十分・臭いが強いときの2回目
ゆでこぼしの回数について、基本は1回で十分です。1回のゆでこぼし+ぬるま湯での洗いで、アクの大半は取り除けます。スーパーなどで売られている牛すじは品質管理が行き届いているので、過度な下処理は必要ありません。
一方で、精肉店のなかには「牛すじは1回のボイルだけ」としているところもあります。肉屋の現場では、新鮮な牛すじは臭みが少ないため、1回のゆでこぼしで十分という考え方です。これは、鮮度の良い牛すじを仕入れられるプロならではの方法といえます。
ただし、臭みや脂が強いと感じる場合は、2回目のゆでこぼしをしても構いません。2回目は沸騰後5分程度で十分です。1回目と同様にぬるま湯で洗い流します。使い分けの目安をまとめると、以下の通りです。
| 牛すじの状態 | ゆでこぼしの回数 | 理由 |
|---|---|---|
| 新鮮な生の牛すじ | 1回(5〜10分) | 臭みが少なく、1回で十分 |
| 臭み・脂が強い | 2回(5〜10分+5分程度) | 2回目で残ったアクを除去 |
| ボイル済みの牛すじ | 不要(軽く洗う程度) | すでに加熱処理済みのため |
「1回だけボイル」の肉屋の方法は、新鮮な牛すじを仕入れられるからこそ成立する方法です。家庭でスーパーの牛すじを使う場合は、基本の1回のゆでこぼしを確実に行い、臭みが気になるときだけ2回目を行うのがおすすめです。
- ゆでこぼし(水から・5〜10分)+ぬるま湯洗いのフル下処理が必要
- 臭みをしっかり取りたい・仕上がりにこだわるなら
- すでに下処理済み。さっと洗うだけで使える
- 時短で作りたいとき・下処理の手間を省きたいときに
状態別の牛すじの下処理
牛すじは販売形態によって下処理の方法が変わります。スーパーで買う牛すじには「生」「ボイル済み」「冷凍」の3つの状態があります。それぞれに適した下処理の方法をご紹介します。
生の牛すじ
生の牛すじは、スーパーの精肉コーナーや精肉店で販売されています。色が鮮やかな赤色で、表面に脂がついているものが一般的です。この状態の牛すじには、基本の3ステップ(下茹で5〜10分・ぬるま湯洗い・3cmカット)をそのまま適用します。
生の牛すじは、ゆでる前の状態では非常に硬く、包丁で切るのは難しいです。無理に生のまま切ろうとすると、包丁を傷めたり、手を切ったりする危険があります。必ず下茹でをしてからカットしてください。
スーパーで買った生の牛すじは、約5cmにカット済みで流通していることが多いです(日本畜産副産物協会)。この場合は、下茹で後に半分に切れば3cm前後になります。
ボイル済みの牛すじ
ボイル済みの牛すじは、すでに加熱処理がされている商品です。パックのなかには白っぽい色をしていて、そのまま煮込みに使えるように加工されています。この状態の牛すじは、下茹での必要はなく、さっとぬるま湯で洗うだけでOKです。
ただし、表面にぬめりや脂が気になるときは、熱湯で数十秒〜2分ほど湯通しするとよいでしょう。土井善晴さんの流儀では、色が変わるまで湯通しするのが目安とされています。湯通ししたら、すぐにぬるま湯で洗い流します。
ボイル済みの牛すじは「加熱済み」ではありますが、そのまま生で食べることはできません。煮込み料理に使う際は、必ず再加熱してください。農林水産省・厚生労働省の食品安全の目安では、75℃で1分以上の加熱が推奨されています。煮込み料理であれば十分にこの条件を満たすので、安心して調理を続けられます。
冷凍の牛すじ
冷凍の牛すじは、生のものを冷凍した場合と、ボイル済みのものを冷凍した場合があります。パッケージの表示を確認して、どちらの状態かを確認してください。
解凍方法は、冷蔵庫で半日〜一晩かけてゆっくり解凍するのがおすすめです。室温での放置は菌が増える原因になるため、絶対に避けてください。農林水産省の指針では、冷蔵庫は4℃前後、冷凍庫は−18℃以下が適切な温度とされています。
急いでいるときは、冷凍のまま下茹でに進むこともできます。冷凍のまま鍋に入れて水から加熱すれば、解凍と下茹でを同時に進められます。この場合、沸騰するまでに時間がかかるので、沸騰後5〜10分のゆで時間を確保してください。
状態別の早見表
| 状態 | 下処理の方法 | 時間の目安 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 生 | ゆでこぼし5〜10分→ぬるま湯洗い→カット | 15〜20分 | 生のまま切らない |
| ボイル済み | ぬるま湯で洗う(気になる時は湯通し数十秒〜2分) | 2〜3分 | 必ず再加熱してから食べる |
| 冷凍(生) | 冷蔵庫で半日〜一晩解凍→基本の下処理 | 解凍+15〜20分 | 室温解凍はNG |
| 冷凍(ボイル済み) | 冷蔵庫で解凍→軽く洗う | 解凍+2〜3分 | 冷凍のまま調理も可 |
牛すじを切るときのコツ
牛すじのカットは、タイミングがとても重要です。切りにくい状態で無理に切ろうとすると、形が崩れたり、包丁を傷めたりする原因になります。ここでは、切りやすいタイミングと分量計算の注意点をご紹介します。
生のまま切らない・完全に柔らかくしてからも切らない
牛すじを切るときの鉄則は、「生のまま切らない」「完全に柔らかくしてからも切らない」の2つです。
生の牛すじは腱の組織が非常に硬く、包丁が通りません。無理に切ろうとすると、包丁の刃が滑って思わぬケガをすることもあります。一方、完全に柔らかく煮込んだ後の牛すじは、形が崩れてしまい、きれいに切り揃えるのが難しくなります。
切りやすいタイミングは、下茹でした後(沸騰後30〜40分ゆでた状態)です。この段階の牛すじは、外側は火が通って少し弾力があり、包丁でスッと切れる硬さになっています。完全に柔らかくなる前の「半煮え」の状態が、実は切りやすいのです。
下処理の段階で5〜10分のゆでこぼしをしただけでは、まだ中心まで火が通っていないことがあります。切りやすさを重視するなら、下茹での時間を30〜40分に延ばすのもひとつの方法です。ただし、これはあくまで「切りやすさ」のための時間であり、柔らかさを出すための本ゆでは別途1.5〜2時間必要です。
ゆでると2〜3割軽くなる
牛すじはゆでると、2〜3割軽くなることがあります(白ごはん.comより)。これは、加熱によって脂やアクが溶け出し、水分も抜けるためです。レシピを参考に買い物をするときは、この点を考慮して分量を決めましょう。
たとえば、煮込み料理に牛すじ300gを使うレシピの場合、生の状態で300gを用意しても、下処理後は210〜240g程度になってしまいます。レシピの分量を守りたい場合は、生の状態で1.2〜1.4倍の量を買っておくのがおすすめです。
分量計算の目安は、以下の通りです。
| レシピの分量(下処理後) | 買う目安(生の状態) | 備考 |
|---|---|---|
| 300g | 360〜420g | 2〜3割の減少を見込む |
| 500g | 600〜700g | 多めに買って冷凍ストックも可 |
| 1kg | 1.2〜1.4kg | 大容量パックがお得なことも |
「買う量は多めに」が鉄則です。余った場合は下処理後に冷凍しておけば、次回の料理にすぐ使えます。

牛すじの下処理を時短する方法
牛すじの下処理は、時間がないときには少し面倒に感じるかもしれません。そこで、圧力鍋を使った時短テクニックと、まとめて下処理する方法をご紹介します。
圧力鍋での下茹で
圧力鍋を使うと、牛すじの下処理と柔らかくする工程を大幅に時短できます。各メーカーやレシピサイトの公式情報では、以下のような加圧時間が示されています。
- エバラ公式:下ゆで5分→圧力鍋で加圧20分
- 東芝公式:1.8気圧で25分
- Nadiaのレシピ:高圧で5分→洗う→高圧で10分(1kgの場合)
圧力鍋を使う場合も、最初のゆでこぼし(5分)は必須です。アクや臭み成分を湯に逃がしてから圧力鍋にかけないと、臭みが凝縮されてしまいます。エバラ公式の手順でも、下ゆで5分→加圧20分という順番になっています。
Nadiaのレシピのように「高圧5分→洗う→高圧10分」と2段階に分ける方法もあります。1回目の加圧でアクを浮かせて洗い流し、2回目の加圧で柔らかくするという理屈です。圧力鍋はメーカーによって仕様が異なるので、取扱説明書の加圧時間を確認してから使用してください。
まとめて下処理して冷凍ストック
牛すじの下処理は、まとめて行って冷凍ストックしておくと便利です。下処理済みの牛すじは、冷蔵で2〜3日以内、冷凍で約1か月(1〜2か月も可)保存できます。冷凍しておけば、忙しい日でも解凍するだけで煮込み料理に取りかかれます。
冷凍保存の手順は、以下の通りです。
- 下処理済みの牛すじを3cm前後にカットする
- 水気をよく拭き取る(霜焼け防止のため)
- 1回分ずつラップに包み、さらにフリーザーバッグに入れる
- 空気を抜いて密封し、平らにして冷凍する
解凍は、冷蔵庫で半日〜一晩かけてゆっくり解凍するのがおすすめです。室温での放置は菌が増える原因になるため、避けてください。冷凍のまま煮込みに使うこともできますが、その場合は加熱時間を少し延ばしてください。
冷凍ストックを作っておけば、「今日は牛すじ煮込みにしよう」と思い立ったときに、すぐ調理を始められます。休日にまとめて下処理しておくのがおすすめです。
牛すじの下処理のゆで汁の活用法
牛すじの下処理で出るゆで汁は、すべてが捨てるべきものではありません。1回目と2回目以降で、ゆで汁の性質が異なることをご紹介します。
1回目のゆで汁は捨てる
1回目のゆでこぼしで出た湯は、アクや臭み成分、余分な脂が溶け出しています。このゆで汁は料理に使わず、すべて捨ててください。湯の表面には白っぽいアクが浮いていて、よく見ると濁っています。これをスープなどに使うと、独特の臭みが料理についてしまいます。
アクの約80%が脂質であることは、広島大学の研究でも示されています。脂が溶け出したゆで汁は、加熱するとさらに酸化が進み、不快な臭いを放つこともあります。1回目のゆで汁は迷わず捨てるのが正解です。
2回目以降のゆで汁は活用
一方、ゆでこぼしを2回行った場合の2回目のゆで汁や、本ゆで(1.5〜2時間の加熱)で出たスープは、活用できます。この段階のゆで汁は、アクや臭みが大幅に減り、牛すじのうまみが溶け出した状態になっています。
活用方法としては、以下のようなものがあります。
- 煮込み料理のスープのベースにする
- 汁物の出汁として使う
- 牛すじカレーの水代わりに使う
特に、ゆで汁をカレーの水代わりに使うと、コクとうまみがアップします。牛すじのうまみが溶け込んだゆで汁は、カレーの味を一段深くしてくれます。カレーの作り方の詳細は牛すじカレーのレシピの記事で紹介していますので、そちらも参考にしてください。
ゆで汁を保存する場合は、冷蔵で2〜3日以内に使い切るのが目安です。それ以上保存したい場合は、冷凍しておくと便利です。製氷皿で凍らせておけば、必要な分だけ取り出して使えます。
牛すじの下処理の失敗と対策
牛すじの下処理でありがちな失敗と、その対策をまとめました。うまくいかないときは、以下の診断表を参考にしてください。
失敗の原因と対策の診断表
| 失敗の症状 | 考えられる原因 | 対策 |
|---|---|---|
| 臭みが残る | ゆでこぼしの時間が短い/ゆで汁を捨てていない | 沸騰後5〜10分はゆでる/ゆで汁は必ず捨てる/臭いが強い時は2回目のゆでこぼし |
| 脂っこい仕上がり | ぬるま湯で洗っていない/アクを取らずに放置した | 40℃前後のぬるま湯で洗う/加熱中はこまめにアクを取る |
| 硬いまま | ゆでこぼしだけで調理を始めた/本ゆでの時間が足りない | 本ゆで1.5〜2時間を確保する(詳細は#80へ) |
| 煮汁が濁る | アクを十分に取らずに煮込んだ | ゆでこぼしでアクをしっかり除去する/煮込み中もアクを取りながら加熱する |
「臭みが残る」失敗の多くは、ゆでこぼしの時間不足か、ゆで汁を使い回していることが原因です。ゆでこぼしは沸騰後5〜10分が目安です。エバラ公式では5分、NHKきょうの料理では10分とされていますが、どちらも「沸騰してから」の時間です。沸騰する前の時間は含まれないので注意してください。
「脂っこい」と感じる場合は、ぬるま湯での洗い方が足りていない可能性があります。冷水で洗うと脂が固まって落ちにくくなるので、必ず40℃前後のぬるま湯を使ってください。
もつ(内臓)の下処理との違い
牛すじと同じ「牛の部位」として、もつ(内臓)を思い浮かべる方もいるでしょう。もつの下処理と牛すじの下処理は、方法が大きく異なります。
もつ(内臓)の下処理では、塩もみをしてぬめりを取る方法が一般的です。塩の研磨作用で表面のぬめりを落とし、臭みの原因となる成分を除去します。これはもつの表面が粘膜で覆われているからです。
一方、牛すじは腱(けん)という結合組織で、内臓ではありません。牛すじには塩もみは不要で、ゆでこぼしが基本です。塩もみをしても、牛すじの臭みは落ちません。牛すじの臭みは内部の脂やたんぱく質に由来するため、加熱して湯に溶け出させる必要があるのです。
この違いを理解しておくと、「牛すじに塩もみが必要?」という疑問も解消されます。牛すじの下処理は「ゆでこぼし」、もつの下処理は「塩もみ」と覚えておきましょう。
よくある質問(FAQ)
Q1. ゆでこぼしは何分すればいいですか?
A. 沸騰してから5〜10分が目安です。エバラ公式では5分、NHKきょうの料理では10分とされています。臭みや脂が強い場合は10〜15分まで延長しても構いません。軽い仕上げでよい場合は1〜3分という流儀もありますが、確実にアクを取るなら5分以上を守りましょう。
Q2. 水で洗うだけではダメですか?
A. 水で洗うだけでは不十分です。牛すじの臭みの主成分は脂とたんぱく質で、広島大学の研究ではアクの約80%が脂質と報告されています。脂は水に溶けないため、洗うだけでは落ちません。加熱してアクを湯に溶け出させ、ゆで汁ごと捨てる「ゆでこぼし」が必要です。
Q3. ボイル済みの牛すじも下処理が必要ですか?
A. ボイル済みの牛すじはすでに加熱処理がされているため、下茹での必要はありません。さっとぬるま湯で洗うだけで使えます。表面のぬめりや脂が気になるときは、熱湯で数十秒〜2分ほど湯通しするとよいでしょう。ただし、必ず再加熱してから食べてください。
Q4. 冷凍の牛すじは、解凍せずに使えますか?
A. 使えます。冷蔵庫で半日〜一晩かけて解凍するのがおすすめですが、急いでいるときは冷凍のまま鍋に入れ、水から加熱して解凍と下茹でを同時に進めることもできます。その場合は、沸騰後のゆで時間を5〜10分しっかり確保してください。室温での解凍は菌が増える原因になるため避けましょう。
Q5. アクは全部取らないとだめですか?
A. アクは「毒」ではなく、加熱で固まった脂とたんぱく質です。広島大学の研究ではアクの約80%が脂質と報告されています。濁りや雑味、脂の酸化による不快臭を防ぐために取り除くものなので、1回目のゆでこぼしはアクを取らずに湯ごと捨て、その後の煮込みではこまめに取るのが効率的です。
Q6. 下処理した後の牛すじはどう保存すればいいですか?
A. 下処理済み(加熱済み)の牛すじは、冷蔵で2〜3日以内に使い切るのが目安です。それ以上もたせたい場合は、1回分ずつラップに包んで冷凍しましょう。冷凍なら約1か月(1〜2か月)保存できます。冷蔵庫は4℃前後、冷凍庫は−18℃以下が適切な温度です(農林水産省)。
まとめ
牛すじの下処理は、「洗う」ではなく「加熱して湯ごと捨てる」ことがポイントです。ここまでの内容をチェックリストにまとめました。
3ステップのチェックリスト
- 下茹で(ゆでこぼし):水から加熱し、沸騰後5〜10分。ゆで汁は必ず捨てる(臭いが強いときは2回目)
- アク取り(洗い):ぬるま湯(40℃前後)で軽くもみ洗い。冷水だと脂が固まる
- カット:冷ましてから3cm前後に。生のまま・完全に柔らかくしてからは切らない
下処理の目的は「臭み抜き」。柔らかさは本煮込みがつくり出します。この使い分けを覚えておけば、牛すじ料理はもう失敗しません。
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下処理が終わったら、以下の記事で煮込みやカレーに仕上げてみてください。
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