牛すじを買って煮込んでみたけれど、いつまでも硬いまま。どのくらい煮ればトロトロになるのか分からない——牛すじの硬さは、腱の主成分であるコラーゲンの性質によるものです。
本記事では、精肉の店長が現場で使っている手順を軸に、牛すじの部位と選び方、下処理、普通鍋と圧力鍋それぞれの煮込み時間、味付け、保存までを整理しました。
牛すじ煮込みの基本

牛すじの部位と分類
牛すじとひと口にいっても、実は牛の体の複数の部位をまとめて呼ぶ総称です。スーパーの精肉コーナーで「牛すじ」と表示されて売られているものの中心は、牛の腱(けん)です。腱とは筋肉と骨を結びつける組織で、歩いたり立ったりする動きを支える部分です。牛の場合、ももやすね周辺に多く存在します。
牛すじとして流通するものには、おもに次の3種類があります。
- アキレスすじ:牛のふくらはぎ側にある太い腱で、牛すじの中でも特に弾力が強い部分です。
- 赤身すじ:肉の繊維に沿って入る薄い腱のことで、筋肉と筋肉の間にある膜状の組織です。
- メンブレンすじ:筋肉を包む薄い膜(筋膜)のことで、加熱すると縮みやすい性質があります。
なお、日本食肉格付協会(JMGA)の牛部分肉の規格13種に「牛すじ」「アキレス腱」という区分はありません。牛すじは、部分肉の整形の過程で出る部位の総称として扱われます。たとえばすね肉は、整形の際に腱を除去する扱いになっています。つまり牛すじは、精肉として流通する過程で「副産物」として取り分けられた部位ということです。
そのため牛すじは、一般的な赤身肉と比べて価格が抑えられていることが多く、家庭でも手を出しやすい部位です。煮込むことで独特の食感とうまみが楽しめるため、日本の食卓ではおでんや煮込み料理の定番として親しまれてきました。
牛すじの選び方と買い方
牛すじを買うときは、どのような状態で売られているかを確認することが大切です。スーパーの精肉売場では、大きく分けて次の2つの形態で販売されています。
- 生の牛すじ:赤身の色が鮮やかで、白い腱の部分がはっきり見えるもの。自分で下処理をする前提で購入します。
- ボイル済みの牛すじ:あらかじめ加熱処理がしてあるもので、下茹での手間が省けます。やや色がくすんで見えるのが特徴です。
生の牛すじを選ぶ際のポイントは、腱の部分が白く、肉の色が鮮やかなものを選ぶことです。パックの底にドリップ(肉から出る水分)が溜まっていないもの、日持ちの表示を確認してなるべく新しいものを選びましょう。業務スーパーなどでは、大きめのブロックで冷凍の牛すじが販売されていることもあります。その場合は、必要な分だけ使うように小分けにして冷凍保存しておくと便利です。
牛すじは部位によって硬さや脂ののりが異なります。煮込み料理に向くのは、ゼラチン質が多いアキレスすじや、肉と腱がバランスよく付いた部分です。逆に脂が多い部分は、煮込むと脂が溶け出して煮汁が濁りやすくなります。購入するときは、なるべく肉と腱のバランスを見て選ぶと、仕上がりがきれいになります。
- 牛すじ(腱)の主成分はコラーゲン(体内で組織を支えるたんぱく質)
- コラーゲンは加熱で変化する(約65℃で収縮し、75〜85℃の湿熱でゼラチン化=トロトロに)
- だから「長時間の煮込み」が欠かせない(低温すぎるとゼラチン化しない)
牛すじがトロトロに仕上がる理屈
腱=コラーゲンの構造
牛すじが長く煮込むとトロトロになるのは、腱の主成分であるコラーゲンが熱によって変化するからです。コラーゲンは体内で組織を支える役割を持つたんぱく質で、牛すじの場合は腱の大部分を占めています。
文部科学省の日本食品標準成分表では、牛すじを「腱・ゆで・可食部100g」として次のように示しています。
| 項目 | 数値(可食部100gあたり) |
|---|---|
| エネルギー | 157kcal |
| たんぱく質 | 31.0g |
| 脂質 | 5.1g |
この表を見ると、牛すじは脂質が少なく、たんぱく質が非常に多い食品であることがわかります。では、このたんぱく質の内訳はどうなっているのでしょうか。コラーゲンは他のたんぱく質と違い、グリシン、プロリン、ヒドロキシプロリンという3つのアミノ酸を多く含む特徴があります。同じ成分表では、腱をゆでたもののアミノ酸として次の値が示されています。
| アミノ酸 | 含有量(可食部100gあたり) |
|---|---|
| グリシン | 7,600mg |
| プロリン | 4,100mg |
| ヒドロキシプロリン | 3,700mg |
この3つのアミノ酸がコラーゲン特有の構成成分です。なお、「牛すじのコラーゲン含有量は◯g」という公的な数値は存在しません。コラーゲンだけを直接測定する方法が公の成分表にはないため、コラーゲン特有のアミノ酸の量で間接的に説明されているのが実情です。ネット上では、牛すじのコラーゲン含有量を具体的な数値で示す記事も見かけますが、それらは公的資料に基づく数値ではないため注意してください。
約65℃の収縮と75〜85℃のゼラチン化
では、コラーゲンはどのようにしてトロトロに変化するのでしょうか。日本食肉消費総合センター(JMI)の資料によると、コラーゲンは加熱によって次のように変化します。
| 温度帯 | コラーゲンの変化 |
|---|---|
| 約65℃ | 収縮し始める |
| 75〜85℃ | 溶け始める(ゼラチン化) |
コラーゲンは約65℃になると収縮し始めます。このとき腱がぎゅっと縮むため、肉全体が硬くなったように感じます。そしてさらに温度が上がり、75〜85℃に達すると、コラーゲンがゼラチンに変わって溶け始めます。このゼラチン化が進むことで、牛すじはトロトロの食感になるのです。
ここで重要なのは、65℃で収縮してから75℃で溶け始めるまでの間に「硬さの壁」があることです。煮込み始めて30分〜1時間くらいの間は「まだ固い」と感じますが、これはコラーゲンが収縮している途中だからです。ここで火を強めたり途中でやめてしまうと、硬いままの仕上がりになります。沸騰したら弱火でコトコトと煮続け、時間をかけてゼラチン化を進めることが大切です。
また、強火でぐらぐら煮ると、肉の表面だけが先に加熱されて硬くなり、煮汁も濁りやすくなります。JMIの資料でも「沸騰したら弱火でコトコト」とされています。トロトロに仕上げるためには、温度を一定に保つことが欠かせません。
- コトコト約2時間、じっくり煮込む
- コラーゲンを確実にゼラチン化させる
- 時間はかかるが、うま味がしっかり出る
- 高圧で短時間(20〜30分程度)に柔らかく
- 100℃以上で加圧するため、ゼラチン化が速い
- 時短でトロトロに仕上げたいときに
牛すじの下処理の流れ
ゆでこぼしと水洗い
牛すじを煮込む前に欠かせないのが、下処理です。牛すじは牛の体の中でも特に運動量が多い部位のため、赤身肉と比べて独特の臭みがあります。この臭みの正体は、血液やリンパ液に含まれる成分が加熱によって変化したものです。
下処理の基本は「ゆでこぼし」です。鍋に牛すじとたっぷりの水を入れ、火にかけて沸騰させます。沸騰してアクが浮いてきたら、その湯を捨てて牛すじを流水で洗います。この最初の湯を捨てることで、臭みの原因となるアクや余分な脂をまとめて取り除くことができます。JMIの資料でも「一度茹でこぼすと臭みが抜ける」とされています。
ゆでこぼしの回数は、臭みが強いと感じる場合は2回行うこともあります。ただし、やりすぎると牛すじのうまみまで逃してしまうため、1回を基本とし、どうしても気になる場合に2回目を行うのがおすすめです。ゆでこぼした後の牛すじは、ぬめりが残らないように流水で丁寧に洗いましょう。
下処理の詳しい手順
ゆでこぼしのあとは、牛すじを食べやすい大きさに切ってから煮込みます。このとき、腱の繊維に対して垂直に切ることがポイントです。腱は繊維が縦に走っているため、繊維に沿って切ると噛み切りにくい仕上がりになります。繊維を断ち切るように包丁を入れると、煮込んだときにほろっとほどけやすくなります。
下処理には、ゆでこぼし以外にも、臭みをさらに抜くためのひと手間や、部位ごとの切り分け方のコツなどがあります。下処理の詳しい手順や、臭みの科学についての深い解説は、牛すじの下処理の記事で詳しく紹介しています。本記事では、ゆでこぼしを1回行って水洗いする流れを基本として、レシピを進めていきます。
なお、市販のボイル済み牛すじを使う場合は、この下処理の手間が省けます。ただし、ボイル済みでも軽く湯通しすると余分な脂が落ちて、よりすっきりとした味わいになります。
普通鍋の牛すじ煮込みレシピ
材料と分量
ここからは、普通の鍋で作る牛すじ煮込みのレシピを紹介します。NHKきょうの料理で田村シェフが紹介した作り方をベースに、家庭で作りやすい分量に調整したものです。牛すじは1.5kgを使うレシピですが、家庭では手に入る量に合わせて調整してください。
| 材料 | 分量(4人分の目安) |
|---|---|
| 牛すじ | 500g程度 |
| 生姜 | 1かけ(薄切り) |
| 長ねぎの青い部分 | 1本分 |
| 水 | 牛すじがかぶる量 |
| 醤油・酒 | 各大さじ4(目安) |
| みりん | 大さじ2〜4(お好みで調整) |
| 砂糖 | 大さじ1.5〜2 |
牛すじの量は、スーパーで売られているパックのサイズに合わせて調整してください。味付けの分量は、あくまで目安です。後述する「味付けの傾向」の章で詳しく説明しますが、醤油と酒を同量ずつ、みりんは醤油の半分から同量までが、多くのレシピに共通する配合です。
作り方の手順
普通鍋で作る場合の手順は、次のとおりです。時間は沸騰してから2〜3時間を見込んでください。
このレシピのポイントは、味付けを肉が柔らかくなってから行うことです。JMIの資料でも「調味料は肉が柔らかくなってから最後に」とされています。最初から塩分を加えると、肉の表面が締まって水分が抜け、硬くなりやすいからです。
田村シェフのレシピでは、煮込んだあとに「温め冷ましを繰り返す」ことで味を含ませています。火を止めて冷ます間に煮汁のうまみが牛すじの内部にゆっくりと浸透します。時間に余裕があれば、冷ましてから再度温める工程を入れると、格段に味が染みた仕上がりになります。

圧力鍋の牛すじ煮込みレシピ
加圧15分の基本
時間がないときは、圧力鍋を使うのがおすすめです。圧力鍋は内部の圧力を高めることで、100℃以上の高温で調理できます。牛すじに含まれるコラーゲンが75〜85℃でゼラチン化することを考えると、圧力鍋の高温はゼラチン化を大幅に早めてくれます。
WMF、マルコメ、アイリスオーヤマなどの公式レシピを調べると、牛すじの加圧時間は「圧力がかかってから15分」が共通の目安になっています。ここで注意したいのは、加圧時間の数え方です。圧力鍋は火にかけてから圧力がかかるまでに時間がかかります。レシピの「15分」は、圧力がかかってからの時間を指しています。圧力がかかるまでの時間は含まれません。
圧力鍋での基本的な手順は、次のとおりです。
圧力鍋を使う場合も、味付けは加圧の後に行うのが基本です。加圧中に醤油などの調味料を入れると、肉が硬くなりやすく、煮汁もうまく仕上がりません。まずは水と生姜だけで加圧し、柔らかくなってから味を整えましょう。
硬い場合の5分追加と電気圧力鍋の注意
加圧15分で火を止めたあと、牛すじがまだ硬いと感じることもあります。その場合は、再加圧して5分追加するのがおすすめです。ナスラックの公式サイトでも、2段階の加圧方法として「15分加圧して硬ければ5分追加」という手順が紹介されています。
牛すじの大きさや部位によって硬さは異なるため、最初の15分で完璧に仕上げようとせず、様子を見ながら追加加圧するのが確実です。圧力鍋は加圧しすぎると牛すじが溶けて煮汁が濁ってしまうため、柔らかくなりすぎる前に火を止めることも大切です。
電気圧力鍋を使う場合は、機種によって加圧時間が異なります。メーカーの公式レシピでは15分や20分などさまざまな設定がありますが、ご自身の機種の説明書を優先してください。電気圧力鍋は加圧方式や出力がメーカーによって異なるため、別の機種のレシピをそのまま使うと、仕上がりに差が出ることがあります。最初は説明書のレシピ通りに作り、硬さを確認しながら調整するのがよいでしょう。
クラシルやエバラのどて煮のレシピでは、加圧時間を20分としているものもあります。これは牛すじの部位や切り方、味付けのタイミングによる違いです。15分で柔らかくなっていればそのまま味付けに進み、硬ければ5分追加するという判断の流れを覚えておくと、どんなレシピにも対応できます。
牛すじ煮込みの味付け
醤油ベースの定番
牛すじ煮込みの味付けは、醤油ベースが定番です。しかし、「これが絶対の黄金配合」という単独のレシピは存在しません。家庭や料理教室によって、配合は少しずつ異なります。そこで、6つの公式レシピ・人気レシピを照合したところ、次のような共通の傾向が見えてきました。
| 調味料 | 傾向 | 目安の分量(牛すじ500gに対して) |
|---|---|---|
| 醤油 | 酒と同量が最も多い | 大さじ4 |
| 酒 | 醤油と同量が最も多い | 大さじ4 |
| みりん | 醤油の1/2〜1倍 | 大さじ2〜4 |
| 砂糖 | 牛すじ200〜300gに対して大さじ1.5〜2 | 大さじ2〜3(甘めは+) |
この表からわかるように、醤油と酒を1:1にするのが多くのレシピに共通する基本形です。みりんは甘さの調整として、醤油の半分から同量までの範囲で加えます。砂糖は牛すじ200〜300gに対して大さじ1.5〜2が目安で、甘めが好みの方は少し足すとよいでしょう。
味付けのコツは、最初からすべての調味料を入れるのではなく、醤油と酒を先に入れて煮込み、味を見ながらみりんと砂糖で調整することです。煮込むほど煮汁が減って濃くなるため、最初から濃い味付けにすると仕上がりがしょっぱくなりすぎます。
みそ仕立てのバリエーション
醤油ベースのほかに、みそ仕立ての牛すじ煮込みも人気があります。どて煮と呼ばれる料理がこれにあたります。みそ仕立てにする場合は、みそは大さじ1〜2を目安に、牛すじが柔らかくなってから加えるのがポイントです。
みそは加熱しすぎると香りが飛んでしまうため、煮込みの最後に加えるのが基本です。牛すじが柔らかくなった時点で火を弱め、みそを煮汁で溶きながら加えます。みそを加えたあとは強火にせず、沸騰させないように注意しながら5〜10分ほど煮含めると、みその香りが立った仕上がりになります。
みそ仕立てにする場合は、醤油の量を減らして調整します。醤油とみそを両方使う場合は、醤油を大さじ2程度に抑え、みそを大さじ1〜2加えるとバランスがよくなります。八丁みそを使うとコクのある濃厚な味わいに、合わせみそを使うとまろやかな味わいになります。お好みで使い分けてください。
牛すじ煮込みに合う具材
具材の下ごしらえ
牛すじ煮込みには、大根、こんにゃく、長ねぎなどの具材がよく合います。それぞれの具材には、少量の下ごしらえが必要です。ここでは、定番の具材の下ごしらえ方法を紹介します。
| 具材 | 下ごしらえ | ポイント |
|---|---|---|
| 大根 | 皮をむいて厚さ2〜3cmのいちょう切りまたは半月切り | 面取りをすると煮崩れしにくい |
| こんにゃく | 塩もみして下茹で、手でちぎるか三角形に切る | アク抜きで臭みが抜ける |
| 長ねぎ | 4〜5cmのぶつ切り | 白い部分は煮込み用、青い部分は臭み取り用 |
こんにゃくは、そのまま使うと独特のアク臭さが残ります。塩もみしてから下茹ですると、アクが抜けて味が染み込みやすくなります。手でちぎると断面がギザギザになり、煮汁が絡みやすくなるのでおすすめです。大根は面取りをすると、煮込んでいる間に角が崩れて煮汁が濁るのを防げます。
具材を入れるタイミング
具材を入れるタイミングは、レシピによって2つの流派に分かれます。ひとつは、大根などの根菜を牛すじと一緒に最初から煮る流派です。大根は牛すじよりも柔らかくなるまでに時間がかかるため、最初から一緒に煮込むことで、大根にも牛すじのうまみがしっかり染み込みます。
もうひとつは、牛すじが柔らかくなった後半に具材を投入する流派です。こちらは、牛すじの煮込み時間と大根の煮込み時間を別々に管理できるため、それぞれのベストな硬さに仕上げられます。こんにゃくは煮込みすぎると硬くなるため、後半に投入するのが無難です。
どちらの流派を選ぶにしても、共通して言えるのは具材を入れたあとは強火にしないことです。具材が煮崩れたり、煮汁が濁ったりするのを防げます。長ねぎは最後の10分ほどで加えると、食感と香りが残っておいしく仕上がります。
牛すじ煮込みの失敗と対策
失敗の原因と対策の診断表
牛すじ煮込みでありがちな失敗と、その対策をまとめました。作り始める前に一度確認しておくと、失敗を防ぎやすくなります。
| 症状 | 考えられる原因 | 対策 |
|---|---|---|
| 臭みが残る | 下処理が不十分 / アクを取っていない | ゆでこぼしを1回行い、煮立つ直前にアクを取る |
| 肉が固い | 煮込み時間が不足 / 強火で煮た | 最低2時間は弱火で煮込む / 圧力鍋なら15分加圧して硬ければ5分追加 |
| 煮汁が濁る | 強火で沸騰させ続けた / アクを取っていない | 沸騰したら弱火にする / アクは煮立つ直前が取りやすい |
| 鍋底が焦げる | 火加減が強い / 煮汁が少なすぎる | 弱火でコトコト煮る / 煮汁が減ったら水を足す |
| 味が濃くなりすぎる | 煮詰めすぎ / 調味料を最初から入れた | 味付けは後半に / 煮汁の量を見ながら調整する |
特に多いのが「煮込んでも固い」という失敗です。この原因の多くは、65℃で収縮してから75℃で溶け始めるまでの時間を飛ばしてしまっていることにあります。煮込み始めて30分ほどは「まだ固い」と感じるのが普通です。ここで火を強めたり、途中で火を止めたりせず、弱火でじっくりと時間をかけることが大切です。
アクの扱い
煮込み料理の途中で浮いてくるアクは、肉や骨から出たたんぱく質が熱で変性したものです。アクをそのままにしておくと、煮汁が濁るだけでなく、独特の臭みが残る原因にもなります。
アク取りのタイミングは、煮立つ直前が効果的です。JMIの資料でも「アク取りは煮立つ直前が効果的」とされています。水から加熱している場合、鍋の縁から小さな泡が出始め、表面にアクが浮いてくるのが煮立つ直前のサインです。このタイミングでアクを取り除くと、煮汁が澄んだ状態に保てます。
アク取りには、網じゃくしやお玉を使います。アクをすくうときは、煮汁ごとすくわないように、表面を静かにすくい取るのがコツです。アクが気になるときは、煮込みの途中でもこまめに取り除きましょう。
- 下処理(ゆでこぼし)を飛ばさない(最初の湯を捨てることで臭みが大きく減る)
- ゼラチン化には温度と時間が必要(75〜85℃の湿熱でじっくり。短すぎると硬いまま)
- 牛すじ煮込みは「翌日がおいしい」(味染みと保存の両面で、作り置きに向く料理)
牛すじ煮込みの保存と翌日
ウェルシュ菌に注意した保存
牛すじ煮込みは作り置きできる料理ですが、保存には注意が必要です。農林水産省の資料によると、煮込み料理で注意すべき食中毒菌としてウェルシュ菌が挙げられます。ウェルシュ菌の芽胞は100℃の加熱でも生存し、増殖しやすい温度帯は12〜50℃です。症状は食後6〜18時間で現れるとされています。
ウェルシュ菌は、加熱調理後にゆっくり冷める過程で増殖しやすいという特徴があります。特に、大量の煮込み料理を鍋ごと冷蔵庫に入れると、中心部がなかなか冷めず、菌が増殖しやすい温度帯を長時間通過してしまいます。
安全に保存するためのポイントは、次の3つです。
- 小分けにする:煮込みができたら、保存容器に小分けにしてから冷まします。鍋ごと冷蔵庫に入れるのは冷却が遅くなるため避けましょう。
- 急速に冷やす:容器を氷水に当てるなどして、できるだけ早く冷ましてから冷蔵庫に入れます。
- 再加熱は鍋底から:食べるときは、おたまで鍋底からかき混ぜながら、中心部まで十分に加熱します。
保存期間は、冷蔵であれば長く置かず、早めに食べ切ることを基本にしてください。冷凍する場合は、小分けにして冷凍用の袋や容器に入れ、空気を抜いて密閉します。冷凍した煮込みは、冷蔵庫で自然解凍するか、鍋に移して加熱します。
温め冷ましの味染みとアレンジ
牛すじ煮込みは、作った当日よりも翌日のほうが味が染みておいしくなる料理です。これは「温め冷まし」を繰り返すことで、煮汁のうまみが牛すじの内部にゆっくりと浸透するためです。田村シェフのレシピでも、温め冷ましを繰り返すことが紹介されています。
翌日以降のアレンジも楽しみのひとつです。煮込みをそのまま丼にのせれば「牛すじ丼」になります。うどんの出汁に煮込みを加えれば「牛すじうどん」になり、おでんのつゆに足してもおいしくいただけます。大根やこんにゃくを足して煮込めば、ボリュームのあるおかずに早変わりします。
余った牛すじ煮込みは、カレーに転用するのもおすすめです。牛すじのゼラチン質がカレーにコクと深みを加えてくれます。牛すじカレーの詳しい作り方は、牛すじカレーのレシピの記事で紹介しています。煮込みを作ったら、少しだけ残してカレーにするのがおすすめです。
よくある質問(FAQ)
Q1. 牛すじは何分煮ればトロトロになりますか?
A. 普通の鍋で作る場合は、沸騰してから弱火で最低2時間が目安です。日本食肉消費総合センター(JMI)の資料では、硬い部位を十分に煮込むには最低2時間とされています。圧力鍋なら圧力がかかってから15分が基本で、硬ければ5分追加してください。
Q2. 圧力鍋での加圧時間は何分ですか?
A. WMF、マルコメ、アイリスオーヤマなどの公式レシピでは、圧力がかかってから15分が共通の目安です。硬さが残っている場合は5分ずつ追加して様子を見ます。電気圧力鍋は機種によって加圧時間が異なるため、取扱説明書の推奨時間を優先してください。
Q3. 下茹では必ず必要ですか?
A. ボイル済みの商品を使う場合は不要なことが多いですが、生の牛すじを買った場合は、ゆでこぼしを1回してから水で洗うのが基本です。最初のゆで汁にはアクや臭みの成分が出るため、捨てるのがポイントです。詳しい手順は牛すじの下処理の記事で解説しています。
Q4. 味付けはいつ入れればいいですか?
A. 牛すじが柔らかくなってから調味料を加えるのが基本です。日本食肉消費総合センター(JMI)の資料でも、調味料は肉が柔らかくなってから最後に加えるとされています。最初から濃い味付けで煮ると、牛すじが締まって固くなりやすいためです。
Q5. 臭みが残ってしまうのはなぜですか?
A. 下処理でゆでこぼしをしていないか、ゆで汁を使い回しているケースがほとんどです。最初のゆで汁には臭みのもとが溶け出しているので、必ず捨てて水で洗いましょう。ボイル済みの商品でも、気になる場合はさっと湯通しすると落ち着きます。
Q6. 作り置きや保存はできますか?
A. できます。煮込み料理はウェルシュ菌のリスクがあるため、粗熱を取ったら浅い容器や袋に小分けして、すばやく冷蔵または冷凍します(鍋ごと冷蔵庫に入れると冷却が遅く危険です)。再加熱するときは、おたまで鍋底までかき混ぜながら中心まで十分に加熱してください。冷ましてから再加熱する「温め冷まし」を繰り返すと、味が染みてさらにおいしくなります。
まとめ
牛すじ煮込みをトロトロに仕上げるポイントは、下処理・火加減・味付けの順番・保存の4つに集約できます。最後にチェックリストとしてまとめました。
牛すじ煮込みのチェックリスト
- 下処理:生の牛すじはゆでこぼし1回→水洗い。最初の湯は必ず捨てる(詳しい手順は関連記事を参照)
- 火加減:沸騰したら弱火でコトコト。普通鍋は最低2時間・圧力鍋は加圧15分から
- 味付けの順番:調味料は牛すじが柔らかくなってから最後に(みそは仕上げに)
- 保存:小分けしてすばやく冷蔵・冷凍。再加熱は鍋底からかき混ぜて中心まで
トロトロの正体は、コラーゲンがゼラチンに変わる「時間」です。時短したい日は圧力鍋、じっくり味をのせたい日は普通鍋と、シーンに合わせて作り分けてみてください。
関連記事の案内
牛すじをもっとおいしく使いたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
- 牛すじの下処理:臭みを抜く湯通しやゆでこぼしの詳しい手順を解説
- 牛すじカレーのレシピ:余った煮込みを活かしたカレーの作り方
今あるものを、そのままお届けする準備をしています。Coming Soon詳しく見る →

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