「『カレー用』と書かれたパックを買って作ったのに、肉が硬くて残念だった」「すね肉とバラ肉、どっちを買えばいい?」という声は、カレー作りの失敗談としてよく聞かれます。カレーに入れる肉は、どの部位を選べばいいのでしょう。
この記事では、農林水産省やJMI(日本食肉消費総合センター)の資料、メーカー公式の調理データを照合し、牛・豚・鶏それぞれのカレー向き部位を、煮込み時間と下処理まで含めて整理しました。部位の「性質」が分かると、カレーの失敗がぐっと減ります。
カレーに使う牛肉の部位
牛肉は「コラーゲン」「脂」「赤身」の3つの性質で、カレーでの役割が決まります。コラーゲンが多い部位は長く煮込むとゼラチン化して煮汁に粘りを出し、脂が多い部位はコクを加え、赤身主体の部位はあっさりとした仕上がりになります。この3軸で部位を選ぶと、作りたいカレーの方向性がはっきりします。それぞれの性質を踏まえて、牛肉の代表的な部位を見ていきましょう。
すね肉とハトチマキ

すね肉は牛の脚の部分で、筋が多く硬い部位ですが、農林水産省の資料では「筋が多く硬め。エキス分・ゼラチン質に富む」と紹介されています。このゼラチン質(コラーゲン)こそが、煮込み料理で重要な役割を果たします。60〜90分ほど煮込むとコラーゲンがゼラチン化してほろほろの食感になり、煮汁にも粘りと深いコクが生まれます。時間をかける価値のある部位です。
同じすね肉でも、場所によって柔らかさが違います。すね肉の中でも柔らかい「ハトチマキ」は、農林水産省の部位図鑑で「主にカレーとシチューに使われる」と紹介されています。肉の味が濃くてコクがあるのも特徴です。スーパーの精肉売場で「ハトチマキ」の表示を見かけたら、カレー用として迷わず選んでよい部位です。
バラ肉とかた肉
バラ肉は、赤身と脂肪が層になった部位です。農林水産省の用途整理でも「カレー・シチュー」に挙がる代表格で、かたばらは「赤身と脂肪が層。角切りでシチュー向き」と紹介されています。脂のコクで濃厚な仕上がりを目指すなら、バラ肉が適しています。JMI(日本食肉消費総合センター)の資料でも、ばらは「角切りの煮込み・カレー向き」とされています。
かた肉は、牛の肩の部分で「赤身でやや硬め、エキス分・コラーゲンを含む。シチュー・カレー向き」と農林水産省の資料にあります。PIIF(日本食肉流通センター)の解説でも「やや硬いがエキス分・コラーゲン多く煮込み向き」とされています。比較的割安な価格帯で、「カレー用」と表示されたパックの主力になっているのがこのかた肉です。赤身主体でありながらコラーゲンも含むため、煮込むとうま味がしっかりと出ます。牛肉の部位の全体像については、牛肉の部位一覧の記事で詳しく解説しています。
カレーに使う豚肉と鶏肉の部位
牛肉は煮込み時間をかけることでおいしさを引き出しますが、豚肉と鶏肉はそれぞれ違った特徴があります。豚肉は脂のコクと価格のバランス、鶏肉は時短での調理が魅力です。ここでは、豚肉と鶏肉のカレー向き部位を確認していきましょう。
豚肉
豚肉で最初に挙げたいのが、かたロース(肩ロース)です。PIIF(日本食肉流通センター)の資料では「コクのある濃厚な味」で、料理例にカレーが挙げられています。3cm角に切って40〜60分煮込むと、定番のカレー肉の仕上がりになります。かたロースは「脂のコク」と「赤身のうま味」のバランスが良く、どんなカレーにも合わせやすい万能部位です。なお、かたロースは店によって「肩ロース」と表示されることもあります。パック表示で見分けにくい場合は、店員に確認すると確実です。
かたロースと似た名前で「かた(ウデ)」という部位もあります。こちらは肩ロースとは別部位で、やや硬めですが煮込み向きです。うま味がしっかりと出るため、カレーに深みを加えたいときに向いています。一方、バラ肉(三枚肉)は脂の層が特徴で、こってりとした濃厚なカレーに仕上がります。薄切りなら30〜40分の時短調理も可能です。もも肉は赤身であっさりとしており、比較的割安な傾向があります。繊維を断つように切り、煮込みすぎないのがおいしく仕上げるコツです。豚肉の部位ごとの特徴をもっと詳しく知りたい方は、豚肉の部位一覧の記事をご覧ください。
鶏肉
鶏肉のカレーで中心となるのは、もも肉です。家畜改良センター(独立行政法人)の鶏部位解説では、もも肉は「脂肪が多くコクがあり、カレー、シチュー、ポトフ向き」と紹介されています。ブロイラーのももは煮崩れしやすいものの、多少加熱しすぎてもあまり硬くならないため、煮込み料理に使いやすい部位です。皮の脂でコクを調節できるのも魅力です。
手羽元もカレーに適した部位です。適度な脂肪やコラーゲンがあり、濃厚な味わいを出してくれます。千葉県の食の資料では、手羽元は30〜40分煮込むと骨から身が外れやすくなるとの目安が示されています。骨の周りの肉はうま味が豊富で、煮込むほどにスープへコクが移ります。
むね肉とささみは脂肪が少なくあっさりとしていますが、注意点があります。家畜改良センターの解説では、むね肉は加熱しすぎると硬くなり、ささみは加熱しすぎるとパサパサになるとされています。むね肉を使う場合は後入れにするか短時間の加熱に留め、ささみは煮込みには不向きです。鶏肉の部位別の特徴は、鶏肉の部位一覧の記事で詳しくまとめています。
カレーの部位別煮込み時間
部位によって「必要な煮込み時間」は大きく違います。調理にかけられる時間帯から逆算して部位を選ぶのが、失敗しないカレーのコツです。ここでは、普通鍋と圧力鍋の2パターンで、部位別の煮込み時間の目安を整理します。
普通鍋の時間の目安
普通鍋で煮込む場合の目安は、牛すね肉で60〜90分(公式レシピ例ではハウス食品が約1時間、S&Bが弱火で90分)、豚かたロース(3cm角)で40〜60分、豚バラ肉で30〜40分、鶏もも肉(一口大)で15〜30分、手羽元で30〜40分(千葉県の資料による目安)です。すべて目安であり、切り方や鍋の種類、火力によって変わります。仕上がりの判定は「竹串や箸がスッと通るか」で行うのが確実です。時間だけでなく、肉の状態を確認しながら調理を進めましょう。
| 部位 | 普通鍋の目安 | おすすめの使い方 |
|---|---|---|
| 牛すね肉(角切り) | 60〜90分 | コラーゲンを溶かしてほろほろ・煮汁に粘り |
| 牛かた肉(角切り) | 60分前後 | 赤身のうま味・割安 |
| 牛バラ肉(角切り) | 40〜60分 | 脂のコクを早めに出す |
| 豚かたロース(3cm角) | 40〜60分 | 万能の定番 |
| 豚バラ肉(薄切り・角切り) | 30〜40分 | こってり時短 |
| 鶏もも肉(一口大) | 15〜30分 | 時短の定番 |
| 手羽元 | 30〜40分 | 骨のコク(千葉県の目安) |
※すべて目安です。圧力鍋の時間は次の見出しで解説します。部位の詳細な解説は牛肉の部位一覧、豚肉の部位一覧、鶏肉の部位一覧の各記事をご参照ください。
圧力鍋なら部位で加圧時間が変わる

圧力鍋を使うと煮込み時間は一気に短くなりますが、部位によって加圧時間が10分単位で変わります。ハウス食品の公式ページでは、部位別の加圧時間が次のように示されています。骨付き鶏もも肉(ぶつ切り)・手羽元は2〜5分、豚肩ロース(一口大角切り)は10分、牛すね肉(大きめ一口大)は15分です。肉の大きさで調整が必要な点も、あわせて覚えておきましょう。
圧力鍋を使う際の安全上の注意点があります。ルーは必ず加圧後に加えてください。加圧前にルーを入れると吹きこぼれや危険があります(ハウス食品の公式ページより)。また、加圧時間が10分以上の料理では、肉だけを加圧し、野菜はレンジで加熱して後から加えると煮崩れを防げます(ハウス食品)。この方法なら、肉はほろほろに、野菜は形を保ったまま仕上げられます。
牛・豚・鶏の肉種ごとの選び方の大枠は、カレーに合う肉のおすすめの記事で解説しています。「部位」の前に「肉種」から決めたい方は、そちらをご覧ください。
部位選びのポイントをまとめると、次の3つになります。
- 時間があるなら「コラーゲン系(すね・かた)」で本格派のカレーに
- 時間がないなら「鶏もも・豚こま」で時短派のカレーに
- 圧力鍋なら公式の加圧時間(鶏2〜5分/豚10分/牛15分)を目安に
カレー用肉の下処理とアク抜き
カレー用の肉を買ってきたら、まず気になるのが「下処理」です。ただし、同じ「下処理」でも、必要なのは部位によって違います。「全部下茹でしなければ」と思ってしまうと、実はやりすぎで、せっかくのうま味を損なってしまうこともあります。ここでは、部位ごとの正しい下処理とアク抜きの考え方をご紹介します。
すじ肉とブロック肉で変わる下処理
牛すじなどは下茹で(ゆでこぼし)で脂とアクを落としてから使います。手順の詳細は牛すじカレーの記事で解説しています。
すね・バラなどは表面を焼いてから煮るのが一般的。うま味が閉じ込められ、アクの発生も抑えられます(JMI)。
牛すじなどのすじ肉は、ゆでこぼし(下茹で)が基本です。すじ肉は独特の臭みや余分な脂が強いため、一度湯通ししてから本格的に煮込むことで、すっきりとした味わいになります。下処理の詳しい手順は、牛すじカレーの記事で解説していますので、そちらをご確認ください。
一方、すね肉やバラ肉などのブロック肉では、下茹でではなく表面を焼いてから煮るのが一般的です。日本食肉消費総合センター(JMI)の解説でも、焼き付けは肉のうま味を閉じ込め、アクの発生を抑える効果があるとされています。フライパンで肉の表面に焼き色がつくまで焼いてから煮込むと、香ばしさも加わってカレーの味わいが深まります。
下茹では臭みや脂を取り除ける一方で、うま味も湯に流出してしまうトレードオフがあります。すじ肉のように臭みが強い部位は仕方ありませんが、ブロック肉まで下茹でする必要はありません。焼き付けだけで十分にアクを抑えられます。
バラ肉と鶏肉の脂・水気の扱い
バラ肉は脂が多いぶん、煮込み中に浮いてくる脂が気になることがあります。そんなときは、アクと一緒に脂をこまめにすくい取るか、煮込みが終わった後に一度冷まして、表面に固まった脂を取り除くと、さっぱりとした仕上がりになります。脂のコクは残しつつ、しつこさだけを抑えたいときに有効な方法です。
鶏肉は、調理前に水気を拭いてから使うのが基本です。水気が残っていると、余分な水分がスープを薄めてしまいます。下味をつける場合も、酒や塩は薄めで十分です。鶏肉はもともと臭みが少ないため、強く下味をつけると肉の風味が損なわれます。むね肉のパサつきが気になる場合は、小さめにカットするか煮込み時間を短くする「後入れ」の方法がおすすめです。
- アクは煮込み中にこまめに取る(日本食肉消費総合センター(JMI)の解説でも基本とされています)
- すじ肉は下茹で、ブロック肉は焼き付けでアクを抑える
- 脂が気になる部位は、煮上がりを一度冷まして表面の脂を取る
売場の「カレー用」肉はどの部位
スーパーの精肉売場には「カレー用」「煮込み用」と書かれたパックが並んでいます。実は、これらは用途表示であり、部位名ではありません。中身が何の部位なのかを正しく見分けられると、カレーの仕上がりがぐっと安定します。ここでは、パック表示の読み方と、見た目での見分け方のコツをご紹介します。
パック表示の読み方
まず確認したいのは、パックに部位名が明記されているかどうかです。「牛肉(かた)」「牛角切り(すね入り)」のように部位名が書かれていれば、その部位の特徴を踏まえて調理できます。部位名が明記されているパックは、仕上がりをイメージしやすいので安心です。
一方、部位名がなく「カレー用」とだけ表示されたパックは、かたやすねなど煮込み向きの部位が中心の混合であることが多いですが、商品によって中身の配合は異なります。部位名がなく中身を確認できない場合は、売場の方に「どの部位が入っていますか」と聞くのが確実です。精肉売場のスタッフは、その日の仕入れ内容を把握しています。
見た目での見分け方
パック越しに中身を確認できる場合は、見た目である程度の部位を推測できます。あくまで目安ですが、以下の3パターンを覚えておくと便利です。
白い筋(結合組織)が目立つものはすね系、赤身と脂の層がはっきりしているものはバラ系、網目状の細かい脂が入っているものはかたロース系の可能性が高いです。それぞれの特徴を表にまとめました。

| 見た目の特徴 | 推測される部位 | カレーでの向き |
|---|---|---|
| 白い筋が目立つ | すね系 | コラーゲンを溶かしてほろほろ・長時間向き |
| 赤身と脂の層がはっきり | バラ系 | 脂のコク・中時間向き |
| 網目状の細かい脂 | かたロース系 | 短時間でも柔らかい |
| 赤身が多く筋が少ない | もも・かた系 | あっさり・煮込みすぎ注意 |
切り落としや混合の場合は、見た目での判断が難しいことがあります。その場合は、部位名表示を優先して選ぶと失敗が少なくなります。
部位を混ぜるコツ
1種類の部位に絞らず、2種類を混ぜると味に厚みが出ます。定番の組み合わせは「すね+バラ」です。すね肉がコラーゲンによる粘りと深いコクを担当し、バラ肉が脂のうま味を担当します。それぞれの持ち味が合わさることで、単品では出せない奥行きのあるカレーになります。
鶏肉なら「手羽元+もも」の組み合わせがおすすめです。手羽元は骨の周りの肉からだしがよく出るため、スープ全体にうま味を広げるだし要員として働きます。もも肉は食べごたえのある肉感で、食べやすさを担当します。予算と相談しながら、いろいろな組み合わせを試してみてください。
よくある質問(FAQ)
Q1. カレー用の肉がいつも硬くなってしまいます。なぜですか?
A. 煮込み時間が足りないか、部位に合わない火加減の可能性が高いです。すね肉などコラーゲンの多い部位は60〜90分(圧力鍋なら加圧15分)が目安です。仕上がりは竹串や箸がスッと通るかで判断しましょう。
Q2. スーパーの「カレー用」パックは何の部位ですか?
A. 用途表示なので、部位は商品により異なります。主にかたやすねなど煮込み向きの部位が中心です。「牛肉(かた)」のように部位名が明記されたものを選ぶと、仕上がりが安定します。
Q3. 豚こま切れでおいしいカレーは作れますか?
A. 作れます。こま切れは複数部位の混合で、短時間でうま味が出やすい時短向きの選択肢です。細かすぎるものは煮崩れしやすいので、大きめのものを選ぶとよいでしょう。
Q4. 鶏むね肉はカレーに入れても大丈夫ですか?
A. 大丈夫です。むね肉は脂肪が少なくあっさりしていますが、加熱しすぎると硬くなります。小さめに切って煮込み時間を短くするか、火を止める直前に加える「後入れ」がおすすめです。
Q5. 圧力鍋でカレーを作るとき、肉の加圧時間はどのくらいですか?
A. 部位で変わります。骨付き鶏もも肉・手羽元は2〜5分、豚肩ロース(一口大)は10分、牛すね肉は15分が目安です(ハウス食品の公式ページ)。ルーは必ず加圧後に加えてください。
Q6. 牛すじはカレーに使えますか?
A. 使えます。すじ肉はゆでこぼしなどの下処理が必要ですが、トロトロに煮込むとコクが出ます。下処理からの詳しい手順は牛すじカレーの記事で解説しています。
精肉売場の「カレー用」パックは、その日の仕入れによって中身の割合が変わります。「カレー用」とだけの表示のものより、「牛肉(かた)」「牛角切り(すね入り)」のように部位名が明記されたものを選ぶと、煮込み時間の見当がつきやすく失敗が減ります。さらに「すね多め」など希望があれば、売場でお願いすると調整してもらえることもあります。
まとめ
- 部位の性質で選ぶ:コラーゲンが多いすね・かたは長時間煮込むとほろほろに、脂が多いバラはコクが出ます。赤身中心のもも・鶏むねは短時間で仕上げ、煮込みすぎに注意しましょう
- 下処理は部位で変える:すじ肉は下茹で、ブロック肉は焼き付けとアク取りが基本です
- 「カレー用」の表示は部位名ではありません。部位名が明記されたものを選び、必要に応じてすね+バラのように組み合わせると味に厚みが出ます
カレーは、部位の性質を味方につけると、家庭でも深いコクを出せます。次のカレーの日に、この記事の部位選びを思い出してみてください。
「はじめの肉屋」では、ほかにも肉選びに役立つ記事を公開しています。
- カレーに合う肉のおすすめ(牛・豚・鶏の肉種別ガイド)
- 牛肉の部位一覧(部位の全体像)
- 豚肉の部位一覧(部位の全体像)
- 鶏肉の部位一覧(部位の全体像)
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