【図解】豚肉の部位一覧|特徴・おすすめ料理を精肉のプロが解説

「スーパーで豚肉を選ぶとき、ロースと肩ロースは何が違うのか」「豚バラと三枚肉は同じものか」「こま切れと切り落としは、どちらを買えばよいのか」── 豚肉は身近な食材でありながら、いざ部位を選ぼうとすると判断に迷う場面が多いものです。

本記事では、農林水産省畜産局長通達による「食肉小売品質基準」の公式7部位を軸に、それ以外の人気部位や内臓部位、さらに「こま切れ」と「切り落とし」の違いまで、業界の規格と精肉現場の実態に基づいて整理します。スーパーで豚肉を選ぶときに「今日の料理ならこの部位だ」と即決できる知識を、最後までまとめました。

豚肉の部位図解 - 公式7部位(かた・かたロース・ロース・ばら・もも・そともも・ヒレ)の位置を示す解説図

目次

豚肉の部位は公式に「7つ」と定められている

意外と知られていませんが、豚肉の部位表示は1977年(昭和52年)1月26日に農林水産省畜産局長通達として定められた「食肉小売品質基準」により、全国で統一されています。小売店で販売される豚肉に適用されるルールで、表示できる主要部位は以下の7つです。

  1. かた(肩)
  2. かたロース(肩ロース)
  3. ロース
  4. ばら
  5. もも
  6. そともも
  7. ヒレ

牛肉は同基準で11部位なので、豚は4つ少ない区分です。これは豚肉の方が部位ごとの肉質差が小さく、細かく分ける必要がないためとされています。東京都中央卸売市場の資料によれば、豚1頭(約110kg)から取れる食肉部位は約50kg、つまり体重の約半分。牛(約700kgのうち約300kg=約4割)と比べて歩留まりが良く、家庭でも扱いやすい食材といえます。

主役となる豚肉の部位4つ|肩ロース・ロース・ヒレ・バラ

家庭で最もよく使われる、豚肉の主役4部位を厚めに解説します。

肩ロース ── 万能性ナンバーワン、迷ったらこの部位

肩とロースの間にある部位で、赤身と脂身のバランスが豚肉の中で最も整っているのが特徴です。赤身の中に脂が粗く混ざっており、豚肉らしい深い旨味と脂のコクを同時に楽しめます。

焼く・煮る・揚げる・炒める ── あらゆる調理法で美味しく仕上がるため、業界では「迷ったら肩ロース」と推奨されることが多い部位です。生姜焼き、ポークソテー、カレー、シチュー、焼き豚、しゃぶしゃぶ、すき焼き、いずれにも対応できます。

家庭での使いこなしについては、別記事「豚肩ロースの絶品レシピ集」(公開予定、月間検索ボリューム1.7万のメガKW記事)で深掘り予定です。

ロース ── 背中の中央、豚肉の「顔」

背中の中央部分にあたる部位で、表面は白い脂肪で覆われています。きめが細かく柔らかい肉質で、脂身と赤身がはっきりと分かれている点が特徴。豚肉らしい脂の甘みと赤身の旨味が、もっとも素直に味わえます。

とんかつの主役として一番有名な部位ですが、ロースハムやベーコン(背ロース)の原料にもなる、加工の世界でも王道です。ローストポーク、生姜焼き、しゃぶしゃぶなどシンプルな調理法ほど、ロースの良さが際立ちます。

調理のコツとして、業界では調理前の筋切りが必須とされます。脂身と赤身の境目に2〜3cm間隔で軽く包丁を入れておくと、加熱時に肉が反り返らず、火の通りも均一になります。

ヒレ ── 1頭から800g、豚肉の最希少部位

ロースの内側、背骨に沿って左右に1本ずつある細長い筋肉。フランス語の「filet」が語源で、「フィレ」とも呼ばれます。1頭の豚から取れるヒレは合計で500〜800g程度、豚肉全体のわずか2%程度しかありません。

運動にほとんど使われない筋肉のため、豚肉の中で最も柔らかく、脂はほぼゼロ。あっさりとした上品な味わいで、脂っこいものが苦手な人にも食べやすい部位です。栄養面でも、疲労回復のビタミンB1、鉄分、亜鉛が豊富で評価されています。

調理は「油で補う」のが定石。脂が少ないため、ヒレカツやポークソテーのように油を使う料理に向きます。逆に煮込みは硬くなりやすいので避けたほうが無難です。

バラ ── 三枚肉、代替不可の脂のスター

胸からお腹にかけての部位。赤身と脂身が三層に折り重なって見えることから「三枚肉」とも呼ばれます。脂肪が多いため、長時間加熱してもジューシーさが残るのが最大の特徴です。

角煮、チャーシュー、サムギョプサル、豚汁、肉巻き ── バラを主役にした料理は数知れません。骨付きの状態は「スペアリブ」として焼肉やバーベキューで重宝されます。

重要な点として、レシピに「豚バラ」と書いてあったら他の部位で代用してはいけないとされます。これは料理の世界では鉄則とされ、料理研究家のしらいのりこ氏も同様の指摘をしています。バラの脂を吸わせて旨味に変える料理(キャベツや白菜の蒸し煮、角煮など)は、バラ以外では再現できません。

豚バラの詳細は、別記事「豚バラはどこの部位?三枚肉との違いを解説」(公開予定)で深掘り予定です。

もう少しメインの豚肉部位|肩・もも・そともも

肩 ── よく動く部位、煮込みで真価を発揮

前足の付け根まわりの部位。豚の中でもっともよく動かす場所のため、筋肉質で肉色が濃いめ、肉質はやや硬めです。脂肪が適度にあるため、長時間煮込むと柔らかくなり、いい出汁が出ます。シチュー、煮豚、カレー、肉味噌など、煮込み・炒め料理の名脇役です。挽肉(豚ひき肉)としても多く使われる部位です。

もも ── 赤身の代表、ヘルシーな主役

後ろ脚にあたる赤身肉。脂肪が少なく、淡白でさっぱりとした味わいが特徴です。たんぱく質量はロースと同等で、脂質はぐっと低い。健康志向の方や、ダイエット中にも選ばれる部位です。

ソテー、ローストポーク、たたき、薄切りなら焼肉やしゃぶしゃぶ。脂が少ないぶん、火を通しすぎるとパサつくので加熱のし過ぎは禁物。塩麹に漬けておくと、しっとり仕上がります。

そともも ── ももよりさらに硬め、煮込みかミンチ向き

ももの外側の部位。ももよりさらに筋繊維が太く、肉質はやや硬め。火入れに注意が必要で、薄切りで使うか、煮込み・ミンチ加工に回すのが定石です。価格はもも肉より控えめなので、コスパ重視で選ぶ場面では心強い部位です。

公式7部位以外の豚肉部位|トントロ・スペアリブ・ランプなど

食肉小売品質基準では「7部位」として表示が統一されていますが、それ以外にも、専門店や焼肉店で人気の部位がいくつもあります。

トントロ(豚トロ)

豚の頬から首にかけての部位。マグロのトロのように脂肪が多く、ジューシーなことから「豚トロ」の名前が付きました。1頭から1kg程度しか取れない希少部位です。焼肉店でおなじみで、塩で食べるのが王道です。

スペアリブ

骨付きのバラ肉。肋骨周りの赤身肉と脂のバランスが絶妙で、バーベキューや煮込み料理の主役級。骨から旨味が染み出すため、煮込むほど深い味になります。

バックリブ

背中側の骨付き肉。スペアリブより脂身が少なく、赤身寄りの味わいです。最近スーパーでも見かけるようになってきています。

ランプ

ロースのお尻側ともも肉の間にある部位で、1頭から2kgほどしか取れません。ロースの繊細さとももの柔らかさを兼ね備えた、知る人ぞ知る部位です。流通量が少ないため、見かけたら手に取る価値があります。

ジョール(頬部)

豚の頬肉のうち、もっとも肉厚な部分。トントロより脂が控えめで、煮込み料理に重宝されます。生ハムの一種「グアンチャーレ」の原料にもなる部位です。

豚の内臓系ホルモン部位|タン・ハツ・レバー・ガツ・シロ

豚にも牛と同様、約20種類の内臓部位(ホルモン)があります。豚ハラミ、豚タン、豚レバー、ガツ(胃)、シロ(大腸)、テッポウ(直腸)など、焼肉や煮込みで定番の部位が多数存在します。

重要な法令として、豚の内臓は2015年6月から食品衛生法で生食が禁止されています(豚レバー・豚肉・豚の内臓全般)。家庭で扱う場合は、必ず中心部までしっかり加熱が必要です。

内臓部位の詳細は、別記事「【完全ガイド】ホルモンの部位一覧|種類・味・食感を肉屋が解説」で、牛・豚・鶏の内臓を含めて網羅的に解説しています。

【独自コラム】豚肉の「こま切れ」と「切り落とし」は別の部位構成

スーパーの豚肉売場で並んでいる、「こま切れ」と「切り落とし」。同じ感覚で買っている人が多い商品ですが、この2つは厳密には別物です。違いを知っているだけで、毎日の料理の仕上がりが安定します。

こま切れ(細切れ)とは

肉を整形する過程で出た、複数の部位の切れ端を集めたもの。1パックの中に肩・ロース・バラ・モモなどがミックスで入っています。厚さも大きさもバラバラ。価格が安いのが魅力ですが、パックによって部位の比率が違うため、料理の仕上がりがその日のロットで変わる側面があります。

炒め物、焼きそば、うどん、卵とじなど、味付けが濃くて部位差が目立たない料理に向きます。

切り落としとは

こちらは「特定の部位」から出る切れ端です。「モモ切り落とし」「バラ切り落とし」のように、必ず部位名と一緒に表記されます。同じ部位の切れ端なので、肉質や脂の入り方は均一です。

しゃぶしゃぶ、生姜焼き、肉巻きなど、肉の質感が大事な料理に向きます。

使い分けの結論

業界の慣習として、「こだわって作る日は『◯◯切り落とし』、安く済ませる日は『こま切れ』」という使い分けが推奨されます。同じ価格帯でも、部位が決まっているか/決まっていないかで、料理の予測可能性がまったく変わります。スーパーで選ぶときは、価格だけでなくパッケージのラベル表示に注目するのが正解です。

豚肉部位別の料理おすすめ早見表

料理 第一推奨 代用可
とんかつ ロース or ヒレ 肩ロース
生姜焼き ロース・肩ロース もも切り落とし
ポークソテー ロース・ヒレ 肩ロース
角煮 バラ(代替不可)
チャーシュー 肩ロース・バラ もも(さっぱり仕立てなら)
カレー・シチュー 肩ロース・肩 バラ
豚汁 バラ こま切れ
しゃぶしゃぶ ロース・バラ薄切り 肩ロース
サムギョプサル バラ(厚切り)
酢豚 肩ロース・もも ヒレ(柔らか仕立て)
ローストポーク ロース・もも 肩ロース
BBQ・スペアリブ スペアリブ・バックリブ バラ厚切り

プロが教える豚肉部位の選び方|売場で見るべき3点

精肉のプロの現場では、新鮮で美味しい豚肉を見分けるポイントとして以下の3点が重視されています。

1. 色のチェック|淡い灰色がかったピンクが新鮮の証

豚肉の色は、淡いピンク〜薄い灰色がかったピンクがベストとされます。鮮やかすぎる赤は発色剤が使われている可能性、逆にくすんで茶色がかっているものは時間が経ちすぎている可能性があります。

2. 脂身のチェック|白くてツヤがある

豚肉の魅力は脂の甘さです。脂身が白くてツヤがあるものを選ぶのが定石。黄ばんでいたり、くすんでいたら鮮度が落ちているサインです。

3. ドリップ(肉汁)のチェック|パックの底に溜まっていないか

パックを傾けたとき、底に赤い汁(ドリップ)が大量に溜まっている肉は要注意です。冷凍・解凍を繰り返したか、保存状態が悪かった証拠とされます。ドリップが少ないものほど、肉本来の旨味が中に閉じ込められています。

豚肉の部位に関するよくある質問

Q. ロースと肩ロースの違いは?

A. 場所も味も別物です。ロースは背中の中央、肩ロースは肩とロースの間。ロースは赤身と脂身がはっきり分かれた繊細な肉質、肩ロースは赤身に脂が粗く混ざった濃厚な味わい。とんかつなら断然ロース、しょうが焼きや煮込みなら肩ロースが向きます。

Q. 豚バラと三枚肉は同じものですか?

A. 同じものです。豚バラ肉の別名が「三枚肉」で、赤身と脂身が三層に重なって見えることが名前の由来です。スーパーや肉屋ではどちらの呼び名も使われます。

Q. ヒレとフィレは違いますか?

A. 同じです。「ヒレ」は日本語、「フィレ」はフランス語(filet)の発音表記。同じ部位を指します。豚ヒレは1頭から500〜800g程度しか取れない希少部位で、豚肉の中でもっとも柔らかく、脂が少ない部位です。

Q. スーパーで安い豚肉は質が悪いの?

A. 必ずしもそうではありません。こま切れや切り落としは、整形時に出る切れ端が原料なので、味・栄養は通常の部位と変わりません。「安い=質が低い」ではなく「安い=見た目が不揃い」なだけです。家庭料理であれば、十分に美味しく食べられます。

Q. 豚肉が臭くなる原因は?

A. 鮮度の低下、または下処理不足が主な原因です。豚肉は牛肉より臭みが出やすい食材で、特にバラやモモの脂部分は時間とともに酸化しやすい性質があります。気になる場合は、酒・牛乳・生姜などで下処理することで臭みは大幅に軽減されます。詳しくは別記事「豚肉の臭み取り|下処理で劇的に美味しくする方法」(公開予定)で解説予定です。

まとめ|豚肉の部位は「選び方」で料理が決まる

豚肉は、公式の7部位を覚えるだけで料理の精度が一段上がります。さらに「こま切れ」と「切り落とし」を使い分け、「豚バラは代替不可」を頭に入れておくだけで、毎日の食卓は確実に変わります。

料理を決めてから部位を選ぶ習慣をつけると、料理の満足度は劇的に上がります。本記事を片手に、次にスーパーへ行ったときは、ぜひ「今日は何の料理か」を先に決めてから、それに合う部位を選んでみてください。

「はじめの肉屋」では今後、豚肉に関する個別の記事(豚肉の種類、豚バラの詳細、肩ロースのレシピ、保存方法、栄養素、臭み取り、ブランド豚ランキングなど)も順次公開予定です。気になる部位があれば、各セクションのリンクから読み進めてみてください。

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