「焼肉店のメニューで見かけるミスジって、どこの部位なんだろう」「希少部位と書いてあるけど、何がそんなに特別なの?」「家で焼くと中央の筋が気になる」── ミスジを前に、こんな疑問を持つ方は少なくありません。
ミスジは、牛1頭からわずかしか取れない希少部位でありながら、赤身の旨みと葉脈のように広がる細かなサシを両立する、知る人ぞ知る人気部位です。その正体を知ると、味の良さも、焼き方や切り方のコツも納得できます。
本記事では、農林水産省の食肉小売品質基準や日本食肉格付協会の規格、文部科学省の食品成分データベースといった一次情報をもとに、ミスジがどこの部位かという基本から、特徴・カロリー・美味しい食べ方まで、精肉店の現場目線で解説します。
ミスジとはどこの部位?肩甲骨周辺の希少部位
まずミスジが牛のどこにあるのかを整理します。ここを押さえると、希少性や肉質の理由が見えてきます。
ミスジは「かた(うで)」の一部
ミスジは、牛の肩甲骨の周辺にある、「かた(うで)」の一部です。農林水産省の食肉小売品質基準では牛肉を11部位に分けますが、ミスジはそのうちの「かた」に含まれます。英語では「トップブレード(Top blade)」、ステーキとしては「フラットアイアンステーキ」とも呼ばれます。なお正確な筋肉名は資料によって見解が分かれるため、本記事では「肩甲骨周辺の平たい筋肉」として扱います。牛肉全体の部位の位置関係は、牛肉の部位一覧にまとめています。
ミスジの名前の由来
ミスジという名前は、中央を走る太い筋と、そこから上下に広がる筋を合わせて「三つの筋」に見えることに由来するとされます。この中央の筋が、後述する切り方のポイントにもなります。断面に走る筋の入り方は他の部位にはない特徴で、精肉店ではこの見た目からミスジを見分けることもできます。「三筋」と書いてミスジと読ませる表記が使われることもあります。
ミスジが希少部位と呼ばれる理由
ミスジが「幻の部位」とも言われるのは、取れる量の少なさと、かたの中では例外的な肉質によります。
1頭から約2〜3kgしか取れない
ミスジは、牛1頭から取れるのは約2〜3kg程度とされ、枝肉全体から見ればごくわずかです。需要が高い一方で供給が限られるため、希少部位として扱われます。
かたの中で例外的にやわらかい理由
「かた(うで)」はよく動く部位で、本来は赤身が締まって硬めの部分が多くなります。しかしミスジは肩甲骨周辺にあって運動の負荷が逃げやすい位置にあるため、かたの中では例外的にやわらかく、細かなサシが入ります。これが「赤身なのにやわらかい」というミスジ独特の個性を生んでいます。
ミスジの特徴|葉脈状のサシと味・食感
ミスジは見た目にも特徴があり、それがそのまま味と食感につながります。

木の葉のように広がる美しいサシ
ミスジの断面は、中央に一本の太い筋があり、そこから葉脈や羽根のように細かなサシが広がる美しい見た目をしています。この霜降りの入り方は、数ある部位のなかでも見分けやすい特徴です。
赤身の旨みと上品な脂の甘み
味わいは、赤身ならではの濃い旨みに、サシによる上品な脂の甘みが重なります。食感は歯切れがよく、それでいてとろけるようなやわらかさがあります。脂が重すぎず赤身のうま味をしっかり感じられるため、赤身好き・霜降り好きのどちらにも好まれる部位です。
ミスジのカロリー・栄養を正しく知る
ミスジのカロリーはよく検索されますが、ここには注意点があります。正確な情報をお伝えします。
公的な成分表に「ミスジ」単独の値はない
実は、文部科学省の食品成分表には「ミスジ」という独立した項目は存在しません。一部のサイトが「成分表に約200〜250kcalと記載」と書いていますが、これは正確ではありません。最も近い区分である「かた(うで)の赤肉」で見ると、100gあたりのエネルギーは次のとおりです。
| 区分(かた・赤肉・100g) | エネルギー | たんぱく質 | 脂質 |
|---|---|---|---|
| 乳用肥育牛 かた 赤肉 | 138kcal | 20.4g | 6.7g |
| 和牛 かた 赤肉 | 183kcal | 20.2g | 12.2g |
ミスジはサシが多めに入る部分のため、実際のカロリーはこの赤肉の値よりやや高くなると考えられます。「低カロリーな赤身」と単純には言い切れない点に注意してください。部位ごとのカロリー比較は今後の記事でも詳しく扱う予定です。
ダイエット中のミスジの楽しみ方
ミスジはサシが入るため極端な低カロリー部位ではありませんが、赤身主体で高たんぱくなため、量と調理法を工夫すれば十分に楽しめます。脂を落としやすい網焼きやグリルで調理し、タレよりも塩やわさびでシンプルに味わうと、余分なカロリーを抑えられます。希少部位ゆえに一度にたくさん食べるより、少量を厚切りで味わうほうが満足度が高く、結果的に食べ過ぎの防止にもつながります。
ミスジの美味しい食べ方・焼き方
希少なミスジを、その良さを活かして食べるための方法を整理します。

ステーキ・焼肉・ローストビーフで楽しむ
ミスジは用途が広い部位です。厚切りのステーキにすれば、赤身の旨みとサシのバランスが最も引き立ちます。焼肉では薄切りでサッと炙り、ローストビーフにすればしっとりとした食感が楽しめます。
より具体的には、2cm前後の厚切りステーキ、しゃぶしゃぶ、肉寿司・炙りなど、赤身の旨みを主役にした食べ方が好相性です。すき焼きに使うと、サシの甘みが割り下と溶け合って上品な味わいに。焼肉店では希少部位の盛り合わせに入ることが多く、一頭からわずかしか取れないため「まず売り切れる部位」とも言われます。家庭で厚切りが手に入ったら、まずはシンプルな塩・こしょうで焼き、ミスジ本来の赤身の濃さを確かめてみるのがおすすめです。
焼きすぎないことが最大のコツ
焼き方の基本は、ハラミなど他の部位と同じく温度管理にあります。焼く前に常温に戻し、強火で表面を手早く焼き固めます。ミスジは脂が上品なぶん、焼きすぎるとパサつきやすいため、ステーキならミディアムレア程度で止めるのがおすすめです。
中央の筋は切り方で食べやすくする
ミスジ最大の注意点が、中央を走る太い筋です。厚切りのときは筋に対して直角に包丁を入れるか、筋を避けて切り分けると、口当たりがよくなります。薄切りにすればこの筋はほとんど気になりません。なお精肉店で選ぶ際は、中央の筋が細く、赤身の色が鮮やかで、サシが均一に入っているものが良品の目安です。
ミスジとザブトンなど他の希少部位との違い
ミスジは肩まわりの希少部位の代表格ですが、同じエリアには個性の異なる希少部位がいくつもあります。混同しやすい部位との違いを整理しておきましょう。
ミスジとザブトンの違い
ミスジとよく比較されるのが、同じ肩まわりの希少部位「ザブトン」です。ミスジは赤身の旨みが主体、ザブトンは肩ロース由来で脂のコクが主体という違いがあります。赤身寄りで軽やかに食べたいならミスジ、濃厚な霜降りを楽しみたいならザブトン、と覚えておくとよいでしょう。ザブトンのくわしい解説はザブトンとは?肩ロースの最高部位をご覧ください。
トモサンカク・サンカクバラとの違い
肩・腕まわりには、ほかにもトモサンカク(ももの付け根の霜降り部位)やサンカクバラ(肩バラの霜降り部位)といった希少部位があります。ミスジが「中央の筋と葉脈状のサシ」で見分けやすいのに対し、トモサンカクは全体に均一なサシ、サンカクバラは脂のコクが強いのが特徴。いずれも希少ですが、赤身と脂のバランスが部位ごとに異なるため、焼肉店では食べ比べてみると違いがよく分かります。トモサンカクの詳細はトモサンカクとはをご覧ください。
ミスジの部位に関するよくある質問(FAQ)
ミスジはどこの部位ですか?
牛の肩甲骨周辺にある「かた(うで)」の一部です。運動の負荷が逃げやすい位置にあるため、かたの中では例外的にやわらかく、細かなサシが入る希少部位です。
ミスジは1頭からどれくらい取れますか?
牛1頭から約2〜3kg程度とされ、量が限られるため「幻の部位」とも呼ばれます。
ミスジのカロリーはどれくらいですか?
公的な成分表にミスジ単独の値はありません。近い区分「かた赤肉」では100gあたり138kcal(乳用肥育牛)〜183kcal(和牛)で、サシが多い分これより高めになる傾向です。
ミスジの中央の筋は食べられますか?
食べられます。厚切りのときは筋に直角に切るか避けて切り分けると食べやすく、薄切りならほとんど気になりません。
ミスジとザブトンはどう違いますか?
ミスジは赤身の旨みが主体、ザブトンは肩ロース由来で脂のコクが主体です。赤身寄りならミスジ、霜降り寄りならザブトンが向きます。
まとめ|ミスジの部位を知って希少な味わいを楽しむ
ミスジは、肩甲骨周辺のかた(うで)にある、1頭から約2〜3kgしか取れない希少部位です。赤身の旨みと葉脈状のサシを両立し、ステーキから焼肉、ローストビーフまで幅広く楽しめます。焼きすぎず、中央の筋を切り方で処理すれば、家庭でもその魅力を引き出せます。希少ゆえ出会える機会は多くありませんが、見かけたらぜひ厚切りで、赤身の濃さとサシの甘みのバランスを確かめてみてください。
牛肉のほかの部位の位置づけから知りたい方は、牛肉の部位一覧もあわせてご覧ください。
「はじめの肉屋」では今後、ミスジをはじめとする希少部位の解説記事を順次公開していきます。気になる部位があれば、各セクションのリンクから読み進めてみてください。
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