【完全図鑑】牛肉の部位一覧|特徴・おすすめの食べ方をプロが解説

スーパーの精肉売場に並ぶ「サーロイン」「リブロース」「ハラミ」「ミスジ」という表記を前に、どれを買えばいいか迷った経験はありませんか。

牛肉の部位は、消費者の目に触れるものだけで11種類、精肉業界の公式規格では13種類、そして希少部位まで含めると40種類以上にのぼります。牛肉の部位を知ることは、「その日の食卓を美味しくする」ための最短ルートです。適した調理法を知っていれば、同じ価格のお肉でも格段に美味しく仕上がります。

本記事では、精肉業界の現場で語られる「牛肉の部位のほんとうの話」を、完全図鑑としてまとめました。一般的な知識の解説で終わらせず、「スーパーでどれを選べばいいか」「家で美味しく食べるにはどうするか」まで、精肉店の現場目線でお届けします。


牛肉の部位図解

目次

牛肉の部位は公式規格で「13部位」

日本食肉格付協会(JMGA)の「牛部分肉取引規格」では、牛1頭の可食部を13の部位に分けるのが標準となっています。精肉店やスーパー、卸業者が共通言語として使う区分です。消費者向けのスーパー陳列では、これを「食肉小売品質基準」によって11部位に整理して表記されています。

  • ネック(首)— よく動く部分で硬め。ひき肉や煮込みに
  • かた(うで)— 赤身中心。カレー、シチュー、切り落としに
  • かたロース(肩ロース)— 肩と背中の境目。万能に使える適度な霜降り
  • リブロース— 背中中央。霜降りの代表格。ステーキやすき焼きに
  • サーロイン— 腰上。ステーキの王様
  • ヒレ(フィレ)— 腰椎の内側。1頭から約4〜5kgしか取れない最高級希少部位
  • かたばら(前バラ)— 肩寄りのバラ肉。カルビや煮込みに
  • ともばら(後バラ)— 腹寄りのバラ肉。三角バラ・カイノミ等を含む
  • らんいち— 尻上。ランプとイチボから成る
  • うちもも— 後脚内側。赤身の定番
  • そともも— 後脚外側。硬めだが旨味が濃い
  • しんたま— 後脚付け根。トモサンカク等を含む
  • すね— ふくらはぎ。牛すじの元

このうち「肩ロース → リブロース → サーロイン」の3つは”ロース3兄弟”とも呼ばれ、背中側の高級部位として並んでいます。「ランプ・イチボ・モモ類」は赤身肉の主力、「バラ・カルビ系」は焼肉と煮込みの主役、「スネ・ネック」は煮込み料理の旨味源です。本記事ではこの13部位をベースに、さらに細かく切り分けられる希少部位も含めて全40部位以上を紹介します。

牛肉の「ロース」は部位名ではなく、3つの部位をまとめた総称

個別の部位紹介に入る前に、精肉売場で最もよく聞かれる疑問から整理しておきましょう。それは、「ロース、サーロイン、リブロースって何が違うの?」という質問です。

「ロース」は、牛の背中側を指す大分類の総称であって、特定の部位名ではありません。

日本ハム公式サイトでも「『ロース』の語源は『ロースト(焼く)』、つまり焼いて食べるとおいしさを感じられる部位」と説明されており、背中周辺の大きなエリア全体を指します。背中側の肉を、肩に近い方から順に3つに分けたのが次の並びです。

  1. 肩ロース(肩寄り)
  2. リブロース(中央)
  3. サーロイン(腰寄り)

つまり、肩ロース・リブロース・サーロインはすべて「ロース」と呼ばれる大エリアに含まれる別部位であり、それぞれ位置も違えば、味・食感・値段も違います。

スーパーで「国産牛ロース」とだけ書かれているパックの中身は、店舗によってリブロース寄りだったり、サーロイン寄りだったりします。「ロース」という表記に全国共通の規格はなく、精肉店ごとの裁量に委ねられている部分があるからです。焼肉店のメニューで「ロース」と書かれている場合も同じで、お店のランクや仕入れ方針によって、指している部分が変わります。「ロースは、店によって意味が変わることがある言葉」と知っているだけで、肉の見方が一段深くなります。

ステーキ向きの牛肉部位3選:サーロイン・ヒレ・リブロース

ここから個別の部位に入ります。まずは、ステーキやすき焼きに使われる高級部位から。

サーロイン — ステーキの王様

サーロインは、牛の腰上の部分。運動量が少ないため肉質がやわらかく、きめ細かい霜降りが入りやすいのが特徴です。

  • 味・食感: きめ細かい霜降りとほどよい赤身のバランス。噛むほどに旨味が広がる
  • 価格感: 高級部位の代表格。国産牛で100gあたり数百円〜、和牛なら数千円に
  • 最適な調理: 厚切りステーキ、すき焼き、しゃぶしゃぶ

「Sir(サー)」の称号の由来について: サーロインの「Sir」は、イギリス国王があまりの美味しさに「Sir」の称号を与えたという逸話がよく知られています。国王候補としてはヘンリー8世、ジェームズ1世、チャールズ2世と複数の説があり、日本ハムの公式サイトでも「俗説」と明記されている民間語源(folk etymology)です。語源辞典による学術的な説明では、古フランス語の「surlonge(sur=上部 + longe=腰肉)」が英語に入って「sirloin」に変化したとされます。

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ヒレ(フィレ)— 最も柔らかい最高級部位

ヒレは腰椎の内側にある、運動量が極端に少ない部位。そのため、牛肉の中で最も柔らかい部位と言われます。

  • 味・食感: 赤身肉ながらナイフが簡単に通るほど柔らかい。脂が少なく上品
  • 価格感: 1頭から約4〜5kg(牛全体の約3%)しか取れない最高級希少部位。和牛なら100gで数千円
  • 最適な調理: ステーキ、ローストビーフ、ヒレカツ

「ヒレ」「フィレ」「ヘレ」は、関東・関西・九州で呼び名が違うだけで同じ部位です。英語ではテンダーロイン(tenderloin)と呼ばれます。

シャトーブリアン — ヒレの中心にある”最高峰”

ヒレの中でも、中央の最も太い部分だけを切り出したものが「シャトーブリアン」です。

  • 1頭からの取り分: わずか600g前後(ヒレ全体4〜5kgのうち)
  • 特徴: ヒレの中でも最も柔らかく、肉質が均一
  • 価格: 和牛の場合、100gで1万円を超えることも

名前の由来は、19世紀のフランスの作家・政治家、フランソワ=ルネ・ド・シャトーブリアンに関係しています。有力とされる説は、1822年、駐英大使としてロンドン在任中の彼に仕えていた大使館付き料理人モンミレイユが、ヒレ肉を2枚のサーロインで挟んで焼くレシピを考案し、これを気に入ったシャトーブリアンが晩餐会で好んで饗したことから、料理の名称として広まったというもの。当初はレシピ名だったものが、1870年代以降、英語圏でヒレの中央部位そのものを指す言葉として使われるようになったとされます。肉質が繊細なため、強く焼き過ぎずレアからミディアムレアで仕上げ、肉の香りそのものを楽しむのがプロの推奨です。

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リブロース — 霜降りの代表格

リブロースは、背中の中央、肋骨(リブ)に沿った部位。「ロースの王様」と呼ばれ、霜降りの美しさは牛肉の中で随一です。

  • 味・食感: サーロインより霜降りが豊富で、濃厚な脂の旨味が特徴
  • 価格感: サーロインと同等の高級部位
  • 最適な調理: ステーキ、すき焼き、しゃぶしゃぶ、ローストビーフ

脂が多いため、一度にたくさん食べるよりは厚切り一枚をじっくり味わうタイプ。すき焼きで食べると、その脂の甘さが割り下と絡んで絶品になります。

日常使いしやすい牛肉部位:肩ロース・ランプ・モモ

次は、普段の食卓で登場頻度が高い、万能・バランス型の部位です。

肩ロース(クラシタ)— 万能選手

肩ロースは、肩と背中の境目にある、適度な霜降りと赤身のバランスが絶妙な部位。別名「クラシタ」とも呼ばれます。

  • 価格感: リブロース・サーロインより手頃で、国産牛なら100g数百円
  • 最適な調理: すき焼き、しゃぶしゃぶ、焼肉、ビーフシチュー

肩ロースは家庭料理の主役としては最もバランスが取れた部位です。霜降りも赤身もそこそこ入っていて、価格も抑えめ。迷ったときの「とりあえずこれ」として優秀です。

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ランプ — 赤身好きの定番

ランプは、お尻の上側、サーロインからつながる部分。赤身が中心ですが、適度な霜降りも入る万能部位です。

  • 味・食感: しっかりした赤身の旨味、柔らかさも十分
  • 最適な調理: ステーキ(赤身志向)、ローストビーフ、たたき

ローストビーフを自宅で作る際、コスパと味のバランスで最もおすすめなのがこのランプです。価格はサーロインの半分程度、仕上がりは柔らかく、赤身の旨味が引き立ちます。

うちもも・そともも・しんたま — モモ肉3兄弟

モモは後ろ脚の部位で、大きく「うちもも」「そともも」「しんたま」の3つに分かれます。

うちもも: 脂が最も少なく、引き締まった赤身。ローストビーフ、たたき、ステーキ(薄切り)に向く。脂身を避けたい人に最適。

そともも: モモの中でも最も運動量が多く、肉質はやや硬め。旨味が濃いため、煮込みや挽肉、コンビーフにも加工される。

しんたま: 後脚の付け根の丸い形の部位。内部にトモサンカク・マルシン・カメノコ・マルカワの4つの希少部位を含む。

  • 味・食感: 脂が少なく、引き締まった赤身
  • 最適な調理: ローストビーフ、たたき、ステーキ、煮込み

モモ類はカロリーが低めなので、ダイエット中でも肉を食べたい人に向いています。脂が少ないぶん焼き過ぎると硬くなるので、火の入れすぎだけは注意が必要です。

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焼肉で差がつく牛肉の希少部位:ザブトン・ミスジ・イチボほか

1頭からわずかしか取れない希少部位は、焼肉の楽しみを何倍にも広げてくれます。売場や焼肉店で見かけたら、ぜひ試してほしい部位を紹介します。

ザブトン(ハネシタ)— 肩ロースの最高部位

ザブトンは、肩ロースの中でも最も霜降りが入った、肩ロースの最上級部分。切り出した形が座布団に似ていることから「ザブトン」と呼ばれます。別名「ハネシタ」。

  • 取り分: 1頭から数kg程度
  • 味・食感: きめ細かな霜降りと柔らかさ、焼肉の”主役級”の濃厚な味わい
  • 最適な調理: 焼肉、すき焼き

ザブトンとは?肩ロースの最高部位の特徴と食べ方

ミスジ — 肩甲骨裏の希少部位

ミスジは、肩甲骨の裏側にある、葉っぱのような形をした希少部位。中央に「三本の筋」のような模様があることからこの名が付きました。

  • 味・食感: 美しいサシと柔らかさ、まろやかな脂の甘み
  • 最適な調理: 焼肉、しゃぶしゃぶ

芸術的なサシの入り方から、「牛肉の大トロ」とも呼ばれる部位です。焼肉店では「特上カルビ」として提供されることもあります。

ミスジとは?希少部位の特徴と美味しい食べ方

ウワミスジ(トンビ)

ミスジの上にある、さらに希少な部位。別名「トンビ」。繊維質でしっかりした赤身の旨味が特徴で、焼肉やローストビーフに適しています。

クリミ(クリ)

肩の腕の部分にある、栗のような形をした赤身部位。ミスジにつながる位置にあり、脂が少なく淡白ながら旨味が濃い。ローストビーフや薄切り焼肉に使われます。

肩三角(カタサンカク)

ウデ(肩)の一部で、三角形の形をした部位。赤身が主体で脂が少なめ。焼肉用として柔らかい部分を、煮込みには硬めの部分を使い分けるのがプロの技です。

イチボ — お尻の先端の隠れた主役

イチボは、お尻の先端、腰から尻にかけてのカーブ部分にある希少部位。名前の由来は「H-bone(寛骨)」で、この骨の近くにあることから。ランプの隣にあり、赤身と霜降りのバランスが絶妙です。

  • 味・食感: しっかりとした赤身の旨味と、きめ細かな脂のコク
  • 最適な調理: ステーキ、焼肉、ローストビーフ

イチボとは?部位の特徴・ランプとの違い・おすすめの食べ方

ラムシン(ランボソ)

ランプとイチボの間に位置する希少部位。赤身と脂身のバランスが良く、モモ肉の中でもヒレに次ぐ繊細な柔らかさが特徴。

トモサンカク(ヒウチ)— 三角形の旨味爆弾

トモサンカクは、モモの内側「しんたま」の中にある、三角形の形をした希少部位。別名「ヒウチ(火打ち石の形に似ていることから)」。

  • 取り分: 1頭から約2〜3kg
  • 味・食感: 濃厚な旨味と、とろけるような霜降り
  • 最適な調理: ローストビーフ、焼肉、ステーキ

モモ肉の中で最もサシが入りやすく、上質な脂の甘さと赤身の旨味を同時に味わえる部位です。

トモサンカクとは?焼肉・ローストビーフに最適な希少部位

マルシン(シンシン)

しんたまの中心部にある、きめが細かく柔らかい赤身部位。サシは少なめですが、赤身の旨味がしっかり。あっさり好きな人におすすめ。

カメノコ

しんたまの一部で、亀の甲羅のような形をした部位。筋が少なく柔らかい赤身で、ローストビーフや薄切り料理に適しています。

マルカワ(マル)

しんたまを覆う外側の部位で、きめはやや粗いものの柔らかい赤身。焼肉・ステーキ向き。

焼肉の主役になる牛肉部位:バラ肉(カルビ)系

バラ肉は、カルビの元となるエリア。赤身と脂が層になっており、焼肉と煮込みの主役です。

カルビ(タテバラ)— バラ肉の甘い脂

「カルビ」は韓国語で「あばら(肋)」を意味し、バラ肉の一部を指します。特に、脂が濃く旨味が強い部分が焼肉で人気です。

  • 味・食感: 濃厚な脂の甘みと、噛むごとに溢れる旨味
  • 最適な調理: 焼肉、BBQ

カルビとロースの違い|味・脂・カロリーを比較

三角バラ(チャックリブ)

肩側のバラ肉から切り出される、三角形の形をした希少部位。バラ肉の中でも特に霜降りが豊富で、焼肉屋で「特上カルビ」として提供されることが多いバラの最高級部位です。1頭から約10kg程度しか取れません。

カイノミ — バラの中でヒレに近い希少部位

カイノミは、バラ肉の中でもヒレに近い位置にある希少部位。バラの脂の甘さと、ヒレに近い柔らかさを併せ持つ、”いいとこ取り”の部位です。

ブリスケ(肩バラ)

肩寄りのバラ肉で、別名「前バラ」。赤身と脂のバランスが良く、コクのある濃厚な味わい。煮込みやカレー、ひき肉に使われます。海外では「ショートリブ」としても重宝されます。

ゲタカルビ(中落ちカルビ)

肋骨と肋骨の間から切り出されるバラ肉。骨の間にあるため形が「下駄」のように見えることからこの名に。希少で、赤身と脂のバランスが抜群です。

ササミ・カッパ・インサイドスカート

バラ肉の細かい部位たち。ササミは横隔膜下の細い赤身、カッパは肋骨を覆う部位、インサイドスカートは腹の内側のスカート状の肉。いずれも焼肉・煮込みに適します。

「赤身肉に見えるけど実はホルモン」な牛肉部位:ハラミ・サガリ・タン

ハラミ — “実はホルモン”の横隔膜

ハラミは赤身のような見た目をしていますが、分類上は内臓(ホルモン)。横隔膜の、筋肉の部分を指します。農水省の公式資料でも「Outside Skirt」(外側のスカート)として内臓編に分類されています。

  • 味・食感: 赤身肉に近い食感だが、内臓特有の柔らかさと旨味
  • 栄養: 高タンパクで鉄分・ビタミンB群が豊富
  • 最適な調理: 焼肉、ステーキ

ハラミはどこの部位?特徴・カロリー・美味しい焼き方

サガリ — ハラミと似て非なる兄弟

サガリもまた横隔膜の部位ですが、ハラミとは違う部分です。農水省の公式表記では「Hanging Tender」(ぶら下がる肉)。腰椎側(背中側)から横隔膜としてぶら下がっていることが名前の由来です。

  • ハラミ: 肋骨側、やや脂が多く濃厚
  • サガリ: 腰椎側、脂が少なくあっさり
  • 希少性: サガリは1頭から1本、ハラミは1頭から2本しか取れない

呼称の地域差が大きいのもこの部位の特徴:

  • 北海道・東北: ハラミもサガリも総称で「サガリ」と呼ぶ
  • 本州の多く: どちらも総称で「ハラミ」
  • 九州: ハラミとサガリを明確に区別(大分では「マクミ」の呼称も)

食品表示の公式規約(食肉の表示に関する公正競争規約)では「牛サガリ(ハラミ)」と一括表記され、区別されていません。

サガリとハラミの違い|見た目・味・食感を徹底比較

タン — コリコリ食感の定番

タンは牛の舌の部位で、焼肉の定番。根元の「タン元」ほど霜降りが入り柔らかく、先端の「タン先」は硬めで赤身寄り、という明確な差があります。値段もタン元の方が高くなります。1頭から取れる量は約1〜1.5kgの希少部位です。

  • 最適な調理: 焼肉(タン塩)、タンシチュー

煮込み料理に最適な牛肉部位:スネ・ネック

派手さはありませんが、煮込むと真価を発揮する部位たち。価格も手頃なので、料理を覚えるほどリピートしたくなるエリアです。

スネ — 牛すじ・シチューの王様

スネは、ふくらはぎ部分の最もよく動く筋肉。生で食べると硬い代わりに、長時間煮込むと旨味の塊になります。

  • 最適な調理: 牛すじ煮込み、ビーフシチュー、カレー、煮込みハンバーグ

牛すじの正体はほぼこのスネ。価格も手頃で、コラーゲン豊富です。

ハトチマキ(ハバキ)

すね肉の一部で、煮込み料理に適するすね肉の中でも、特に柔らかい肉質が特徴の希少部位。焼肉としても食べられます。

ネック — ひき肉・ソーセージの名脇役

ネックはよく動く首の肉。硬めですが味が濃く、ひき肉にしてハンバーグ、ソーセージ、ミートソースに最適です。スーパーでは単体で売られることは少なく、挽肉や切り落としに加工されていることが多い部位です。

料理別で選ぶ牛肉部位の早見表

「結局、この料理には何を選べばいいの?」という疑問に、早見表で答えます。

料理 おすすめ部位 理由
ステーキ(贅沢) サーロイン / シャトーブリアン / リブロース 柔らかさ・霜降り・香りのバランス
ステーキ(日常) ランプ / イチボ / ラムシン 赤身の旨味とコスパ
焼肉 カルビ / ハラミ / ザブトン / ミスジ / 三角バラ 脂と赤身の組み合わせで満足度が高い
すき焼き 肩ロース / リブロース / サーロイン 霜降りが割り下と相性抜群
しゃぶしゃぶ 肩ロース / ミスジ / リブロース 薄切りでさっと火が入る部位
ローストビーフ ランプ / うちもも / トモサンカク / ヒレ 赤身中心で均一に火が通る
煮込み(シチュー等) スネ / バラ / かた 長時間煮てもパサつかず、旨味が出る
カレー バラ / うちもも / かた 赤身と脂のバランス、コスパ重視
牛丼 バラ / 肩ロース(薄切り) 脂の甘みと赤身の旨味
たたき・刺身 ランプ / うちもも / イチボ 赤身の旨味を直接味わう

特に年末年始にローストビーフを作るなら、ランプかトモサンカクが家庭向けの最適解です。価格・味・火の入り方のバランスが抜群で、失敗しにくく、仕上がりが美しい。

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売場でのプロの牛肉選びのポイント3つ

部位を覚えたら、次は同じ部位でも良し悪しを見分ける目を持ちたいところです。精肉のプロが売場で実際にチェックしている3つのポイントを紹介します。

① 色 — 鮮やかな赤は新鮮さの証

牛肉は空気に触れると色が変わります。鮮やかな赤色をしているものが新鮮。暗赤色や黒ずみがあるものは、カット後から時間が経っている可能性があります。

ただし、熟成肉はあえて暗い色になります。熟成と劣化は別物で、熟成は意図的に酵素の働きを引き出し、旨味を増やす技術。一般消費者が見分けるのは難しいため、通常のスーパーで選ぶなら鮮やかな赤を選んでおけば間違いありません。

② ドリップ(肉汁)— パックに溜まっていないか

パックの中に赤い液体(ドリップ)が溜まっている肉は、避けた方が無難です。ドリップは肉の細胞が壊れて漏れ出たもので、旨味成分が逃げている証拠。パックを傾けてみて、液体がほとんど出ないものを選ぶのがコツです。

③ 脂の色と質感 — 白くてツヤがあるものが良質

脂は白くてツヤがあるものが良質です。黄ばんでいたり、パサついて見えるものは、時間が経っているか、牛の状態が良くなかった可能性があります。

和牛の脂は特に、光に当てるとクリーム色に近い光沢が出ます。和牛の脂は融点が低く、体温でとろけるのが美味しさの秘密で、その質感は見た目にも表れます。

牛肉の部位に関するよくある質問(FAQ)

Q. ヒレとフィレは違う肉ですか?

A. 同じ部位です。「ヒレ」は日本語、「フィレ」はフランス語・英語(Filet / Fillet)の発音表記です。関西では「ヘレ」とも呼ばれます。いずれも牛の腰椎の内側にある、最も柔らかい部位を指します。

Q. サーロインとロースは何が違いますか?

A. サーロインはロースの一部です。「ロース」は背中側の大エリアを指す総称で、肩側から順に「肩ロース → リブロース → サーロイン」と分かれます。スーパーで「ロース」とだけ表記される肉は、店舗によってリブロース寄りだったりサーロイン寄りだったりするため、購入時はお店の人に確認するのが確実です。

Q. 牛肉で一番柔らかい部位はどこですか?

A. ヒレ、特にその中央部分の「シャトーブリアン」です。ヒレは運動量が極端に少ない筋肉なので、牛肉の中で最も柔らかい部位とされます。1頭からヒレ全体で約4〜5kg、シャトーブリアンに至ってはわずか600g前後しか取れません。

Q. ローストビーフに一番合う部位は何ですか?

A. 家庭で作るならランプかうちもも、贅沢にやるならヒレやトモサンカクがおすすめです。ランプは赤身と脂のバランスが良く、塊で買えて価格も抑えめ。仕上がりも柔らかく失敗しにくい部位です。詳しくはローストビーフに最適な部位は?で解説しています。

Q. ハラミは赤身肉ですか?ホルモンですか?

A. 分類上はホルモン(内臓)です。ハラミは横隔膜の筋肉部分で、見た目や食感が赤身肉に近いため「赤身系ホルモン」と呼ばれます。農水省の公式資料でも内臓編に分類されています。タンパク質が多く、鉄分・ビタミンB群も豊富で、焼肉の人気部位の一つです。

Q. 安くて美味しい部位はありますか?

A. 煮込むなら「スネ」、焼いて食べるなら「肩ロース」が、価格と味のバランスに優れています。スネは牛すじ煮込みやシチューで真価を発揮し、肩ロースは焼肉・すき焼き・しゃぶしゃぶと万能に使えます。どちらも国産牛で100gあたり数百円から手に入る、家計に優しい部位です。

Q. サーロインの「Sir」は本当に英国王が与えた称号ですか?

A. これは民間語源(folk etymology)と呼ばれる俗説です。ヘンリー8世、ジェームズ1世、チャールズ2世の3説があり、歴史的な根拠はありません。学術的には、古フランス語「surlonge(上部の腰肉)」が英語に入って「sirloin」になったとされます。

Q. 「ロース」と「ロース肉」、表記の違いに意味はありますか?

A. 明確な規格はなく、店舗ごとの裁量です。スーパーで「国産牛ロース」とだけ表記されている肉は、店舗によってリブロースやサーロインの切り出し部分、あるいは肩ロースの一部が使われていることがあります。焼肉店のメニューも同様で、お店のランクによって指す部位が変わります。

まとめ:牛肉の部位を知れば、食卓はもっと豊かになる

牛肉の部位は、公式規格で13、小売分類で11、細かい希少部位まで含めれば40以上に分かれます。覚えてしまえば、その日の食卓をぐっと豊かにしてくれる知識です。

スーパーで迷った時は、まず今日の料理を決めて、本記事の【料理別早見表】に戻ってきてください。ステーキならサーロイン、煮込みならスネ、ローストビーフならランプ、焼肉ならミスジやザブトン、と選べるようになります。

「はじめの肉屋」では今後、個々の部位について、さらに詳しい解説記事を順次公開していきます。気になる部位があれば、各セクションのリンクから読み進めてみてください。

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