「和牛の種類って黒毛和牛だけじゃないの?」「スーパーで見かけるあか牛や短角牛は何が違うの?」「赤身が好きだけど、どの品種を選べばいいの?」── 牛肉売り場でこうした疑問を持つ方は少なくありません。和牛とひと口に言っても、実は複数の品種があり、見た目も味わいも産地も大きく異なります。「和牛=黒毛和牛」だと思っていた方も、品種ごとの特徴を知ることで、肉選びの幅がぐっと広がるはずです。
結論から言うと、和牛は黒毛和種・褐毛和種・日本短角種・無角和種の4品種から構成される肉専用種です。農林水産省の資料によれば、この4品種とそれらの交雑種のみが「和牛」と表示できます。ただ、飼養頭数では黒毛和種が約98.4%を占めており、残りの3品種は合わせても2%に満たないのが現状です。この記事では、そんな「知られざる3品種」を主役に、特徴や味わい、入手方法までをくわしく解説していきます。
この記事では、農林水産省の「和牛改良・遺伝資源をめぐる情勢」や専門誌『畜産技術』に掲載された調査データをもとに、品種別の飼養頭数や平均肉質等級、枝肉価格といった具体的な数値を交えながら、和牛4品種の違いを徹底比較します。「肉の種類の完全ガイド」で牛肉全体の分類を、「和牛のランク・等級」で格付けの仕組みを、「黒毛和牛とは」で黒毛和種のくわしい話を、それぞれご覧いただけます。
- 黒毛和種…和牛生産の約9割超を占める代表格。きめ細かい霜降り
- 褐毛和種(あか牛)…赤身が多く、適度な脂肪分も持つ
- 日本短角種…低脂肪で、旨味の基になるアミノ酸が豊富な赤身
- 無角和種…希少で、流通量が極めて少ない
和牛の種類は4品種
和牛の定義と品種構成を確認しておきましょう。まずは「和牛」と表示できる範囲と、各品種の飼養頭数の全体像を押さえます。

和牛と表示できる品種の範囲
農林水産省によると、和牛とは日本で品種改良されてきた4品種とそれらの交雑種のみを指し、それ以外は「和牛」と表示できません。具体的には、食肉公正競争規約で「和牛」と表示できるのは、①黒毛和種、②褐毛和種、③日本短角種、④無角和種、⑤①〜④の品種間の交配による交雑種、⑥⑤と①〜⑤の交配による交雑種の6区分です。このルールは全国食肉公正取引協議会が策定し、公正取引委員会の承認を受けたもの。違反には警告や除名、違約金などの措置があります。
品種別の飼養頭数と構成比
農林水産省「和牛改良・遺伝資源をめぐる情勢」(令和7年4月)によると、令和7年1月末時点の和牛の品種別飼養頭数は以下のとおりです。原データは家畜改良センターの「牛個体識別全国データベース」です。
| 品種 | 飼養頭数(令和7年1月末) | 構成比 |
|---|---|---|
| 黒毛和種 | 約173万頭(1,733千頭) | 98.4% |
| 褐毛和種 | 約2万2千頭(22千頭) | 1.3% |
| 日本短角種 | 約5,600頭(5.6千頭) | 0.3% |
| 無角和種 | 約200頭(0.2千頭) | 0.0% |
| 和牛4品種 合計 | 約176万頭(1,761千頭) | 100% |
黒毛和種が98.4%を占め、褐毛和種1.3%、日本短角種0.3%、無角和種は0.0%という構成です。和牛全体では約176万頭が飼養されています。無角和種に至っては約200頭しかおらず、いかに希少な存在かが分かります。
和牛・国産牛・交雑種の区分
「和牛」と「国産牛」は、もともと基準が違う言葉です。和牛は品種区分で、国産牛は飼養地基準の区分です。牛肉トレーサビリティ法の種別では、黒毛和種や褐毛和種などの和牛4品種のほかに、黒毛和種×褐毛和種、和牛間交雑種、肉専用種、ホルスタイン種、ジャージー種、乳用種、交雑種などが定められています。和牛×ホルスタイン種の交雑種(F1)は「和牛」とは表示できず、あくまで「交雑種」という区分になります。牛肉の分類全体については「肉の種類の完全ガイド」で詳しく解説しています。
黒毛和種の位置づけと特徴
和牛の主役である黒毛和種について、ここでは4品種の比較に必要な範囲で確認します。くわしい解説は別記事にゆずります。
黒毛和種の飼養頭数と主産県
黒毛和種は被毛色が黒褐単色で、和牛全体の95%以上を占める主要品種です。主産県は全国にわたり、特定の地域に偏っていないのが特徴です。平成28年9月末時点の都道府県別飼養頭数では、鹿児島県が268,935頭(17.0%)、宮崎県が202,748頭(12.8%)、北海道が174,141頭(11.0%)で、上位3県で全体の40.8%を占めています。
黒毛和種の肉質と脂肪交雑
黒毛和種は肉質、とくに脂肪交雑の面で優れています。専門誌『畜産技術』(2017年)の調査によると、黒毛和種の平均肉質等級は3.7で、和牛4品種の中で最も高い数値です。肥育期間は約604日と4品種の中で最も長く、じっくり時間をかけて脂肪を蓄えるのが特徴です。黒毛和種の脂の科学や血統、美味しさの秘密については「黒毛和牛とは」で詳しく解説しています。

褐毛和種(あか牛)の特徴と産地
褐毛和種は「あか牛」の愛称で親しまれる品種です。耐暑性に優れ、赤身と適度なサシのバランスが特徴です。
褐毛和種の成立と熊本系・高知系
褐毛和種は1948年から全国和牛登録協会で登録が始まり、1952年に日本あか牛登録協会が発足して熊本系褐毛和種の登録を実施しました。起源は朝鮮牛ですが、成立の過程で熊本系と高知系は遺伝的に異なります。熊本県では明治40年(1907年)に導入された2頭のシンメンタール種の雄を交配して改良し、1923年に標準体型を作成しました。高知県では1906〜1912年にシンメンタール種が導入され、その後朝鮮牛で改良されました。昭和19年(1944年)に両者は褐毛和種として認定されています。
高知系の「土佐あかうし」は、褐色の体毛に加えて目の回り・鼻・角・蹄・しっぽの先などが黒い「毛分け」が特徴で、これが熊本系との外見上の違いです。皮下脂肪が薄く、可食部の割合が高いのも特徴です。
褐毛和種の主産県と頭数
褐毛和種の主産県は熊本・北海道・高知です。令和7年1月末時点の飼養頭数は約2万2千頭で、和牛全体の1.3%を占めます。平成28年9月末時点の都道府県別内訳では、熊本県が14,589頭(68.6%)、北海道が2,884頭(13.6%)、高知県が1,826頭(8.6%)で、上位3県で9割以上を占めています。
熊本県では本来、黒毛和種より褐毛和種のほうが飼養頭数が多く、昭和50年代には繁殖雌牛で黒毛和種の約10倍・5万5,000頭が飼養されていました。しかし、その後の40年間で褐毛和種の繁殖雌頭数は55,385頭から10,364頭へと約5分の1に減少。逆に黒毛和種は繁殖雌牛が9倍、肥育牛が23倍に増加しました。熊本県で黒毛和種の頭数が褐毛和種を上回ったのは、繁殖牛で平成13年、肥育牛で平成6年のことです。
褐毛和種の肉質
褐毛和種の肉質は、赤身が多く適度な脂肪分も含み、うま味とやわらかさ、ヘルシーさを兼ね備えています。GI(地理的表示)「くまもとあか牛」の登録情報によると、うま味をもたらす遊離アミノ酸が多く、甘味を呈するグリコーゲンも豊富です。平均肉質等級は2.8で、黒毛和種(3.7)に次ぐ数値です。肥育期間は約494日と4品種の中で最も短く、1日平均増体重は0.90kgと効率的な発育を見せます。
日本短角種の特徴と夏山冬里方式
日本短角種は東北北部と北海道で飼養される品種で、低脂肪の赤身肉が特徴です。伝統的な放牧方式で育てられます。
日本短角種の成立と主産県
日本短角種は、在来種の南部牛にショートホーンを交配して作出されました。毛色は濃赤褐単色で有角、体格は和牛のなかでは大きいほうです。1957年から日本短角種登録協会で登録が実施されています。主産県は岩手・北海道・青森・秋田で、令和7年時点で岩手県が2,819頭・全国シェア48.6%と飼養頭数日本一です。平成28年9月末時点では岩手県4,377頭(53.9%)、北海道1,693頭(20.8%)、秋田県765頭(9.4%)、青森県663頭(8.2%)となっています。
夏山冬里方式という飼い方
日本短角種は「夏山冬里方式」という独特の飼養方法で知られています。これは、夏期は親子で牧野等に放牧し、冬期は牛舎で飼養する方式です。おおむね3〜5月の間に生まれた子牛は、5〜10月にかけての約6ヶ月間、母牛と一緒に山や丘陵の放牧地で過ごします。繁殖は「まき牛」による自然交配で、晩秋に農家に戻し冬期間は牛舎で飼養されます。このため、日本短角種の子牛の出生数には季節性があり、飼養頭数にも季節変動が見られます。
日本短角種の肉質
日本短角種は、低脂肪で、うま味の基となるアミノ酸をたっぷり含む赤身の牛肉が特徴です。一方で、肉質はきめが粗く、脂肪交雑では黒毛和種に及びません。平均肉質等級は2.0です。しかし、育成子牛の飼料費は48,565円(生産費の16.0%)で、黒毛和種の213,612円(30.8%)や褐毛和種の170,943円(31.9%)の3分の1以下です。これは、放牧育成によるコスト構造の違いを反映した数字です。枝肉売上額は1頭当たり593,170円(平成26年度)で、黒毛和種の991,921円と比べると低いものの、生産費も304千円と黒毛和種の552千円より大幅に低くなっています。

無角和種の希少性と現状
無角和種は山口県だけで飼養される、和牛4品種の中で最も希少な品種です。その歴史と現状をみていきます。
無角和種の成立
無角和種は、山口県阿武郡で在来牛にアバディーンアンガス種を交配して作出された品種です。毛色は黒色で黒毛和種より黒味が強く、無角(つのがない)のが特徴です。大正時代に黒毛和種とアバディーンアンガス種を交配し「無角防長種」ができ、これをさらに昭和初期にアンガス種で改良しました。大正9年(1920年)に「小雀号」の借り受けが開始され、昭和19年(1944年)に「無角和種」として正式認定されています。体格は小型で、早熟・早肥、粗飼料の利用性に優れています。
昭和38年9,790頭から約200頭への減少
無角和種は、肉量重視だった昭和の前半には順調に頭数を伸ばし、昭和38年には9,790頭に達しました。当時は子牛価格も黒毛和牛より無角和牛のほうが高値で取引されていたといいます。しかし昭和40年代以降、消費者の志向が霜降り重視に変わると黒毛和種との子牛価格差が開き始め、牛肉の輸入自由化がさらに拍車をかけました。平成になると無角和種は黒毛和種の半値近くになり、平成6年には250頭余りまで減少しました。無角和種振興公社は平成6年9月に設立され、現在は約140頭を繁殖・肥育しています。令和7年1月末時点の飼養頭数は約200頭で、和牛全体の0.0%という極めて希少な存在です。
無角和種の肉質
無角和種は、一般に飼育されている黒毛和種に比べて粗飼料の利用性が高く、発育・増体に優れ、「和牛独特の風味を持つ赤身の多いヘルシー牛肉」を特徴とします。霜降りになりにくく、赤身が自慢の肉質です。平均肉質等級は2.0で、日本短角種と同じ数値です。肥育終了体重は590kgと4品種の中で最も軽く、枝肉重量も379kgと小型です。山口県阿武町では「赤肉に富み美容と健康の面からも注目」「肉が柔らかく、和牛独特の風味がある」と紹介されています。
- 黒毛和種(和牛生産の約9割超)
- きめ細かいサシと、とろける脂
- しゃぶしゃぶ・すき焼き・ステーキで
- 日本短角種・褐毛和種
- 低脂肪で、噛むほどに広がる赤身の旨味
- ヘルシー志向・赤身好きの人に(入手先は限られる)
和牛4品種の違い早見表
ここまで解説してきた4品種の特徴を、ひとつの表にまとめました。毛色・主産県・飼養頭数・平均肉質等級・肉質の方向性を比較できます。
| 項目 | 黒毛和種 | 褐毛和種 | 日本短角種 | 無角和種 |
|---|---|---|---|---|
| 毛色 | 黒褐単色 | 黄褐色〜赤褐色 | 濃赤褐色 | 黒色(黒毛より黒味が強い) |
| 主産県 | 全国 | 熊本・北海道・高知 | 岩手・北海道・青森 | 山口 |
| 飼養頭数(令和7年1月末) | 約173万頭 | 約2万2千頭 | 約5,600頭 | 約200頭 |
| 構成比 | 98.4% | 1.3% | 0.3% | 0.0% |
| 平均肉質等級 | 3.7 | 2.8 | 2.0 | 2.0 |
| 肥育期間 | 約604日 | 約494日 | 約575日 | 記載なし |
| 肉質の方向性 | 脂肪交雑(霜降り) | 赤身+適度なサシ | 低脂肪の赤身 | 赤身(霜降りになりにくい) |
| 向く食べ方 | しゃぶしゃぶ・すき焼き | ステーキ・焼肉 | ステーキ・ローストビーフ | ステーキ・焼肉 |
この表を見ると、黒毛和種は脂肪交雑に特化し、他の3品種は赤身を活かした肉質であることが一目で分かります。平均肉質等級の意味や格付けの仕組みについては「和牛のランク・等級」で詳しく解説しています。
品種による等級の出やすさの違い
同じ「和牛」でも、品種によって肉質等級の出やすさが異なります。等級の仕組みそのものより、品種による差に焦点を当ててみていきます。
品種別の平均肉質等級
専門誌『畜産技術』(2017年)に掲載された調査によると、品種別の平均肉質等級は以下のとおりです。これは農水省の「家畜改良増殖目標」(2015年)に基づく全国平均値です。
| 品種 | 平均肉質等級 |
|---|---|
| 黒毛和種 | 3.7 |
| 褐毛和種 | 2.8 |
| 無角和種 | 2.0 |
| 日本短角種 | 2.0 |
| (参考)交雑種 | 2.6 |
| (参考)乳用種 | 2.0 |
黒毛和種の平均肉質等級は3.7で、褐毛和種の2.8、日本短角種・無角和種の2.0を大きく上回ります。この数値が「黒毛和種ばかりが評価される」理由の一端を示しています。等級・BMSの仕組みそのものは「和牛のランク・等級」の記事を参照してください。
同じBMSでも品種で変わる枝肉単価
重要なのは、同じBMSナンバーでも牛の品種によって枝肉価格が異なるという点です。熊本県の同一時期・同一市場の実績集計では、黒毛和種>交雑種>乳用種の順で単価が高いことが示されています。これは、脂肪交雑(BMSナンバー)が枝肉価格形成に最も強く関与している一方で、脂肪の質や肉色、きめといった他の要素も価格に影響するためです。
平成26年度の去勢肥育牛1頭当たりの枝肉売上額を見ると、黒毛和種が991,921円、褐毛和種が814,292円、日本短角種が593,170円です。同じ和牛でも品種によって枝肉売上額に最大約40万円の差が生じています。この価格差が、生産者の品種選択に大きな影響を与えてきたのです。
黒毛和種が9割超を占める理由
なぜ黒毛和種だけがここまで増えたのか。その理由を、歴史と経済の両面からひもといていきます。
輸入自由化と霜降り志向の影響
牛肉の輸入自由化以降、肉質重視の傾向が強くなり、肉質で劣る褐毛和種・日本短角種は急速に数を減少させ、その分肉質で優れる黒毛和種の比率が高くなりました。昭和63年には牛枝肉取引規格がBMS(脂肪交雑)や歩留基準値などの具体的な物差しを取り入れた客観性を重視した基準に変わり、和牛と輸入牛肉との肉質差を意識した改良が推進されました。消費者の霜降り志向が、黒毛和種への一極集中を後押ししたのです。
枝肉価格と生産費の差
経済的な観点から見ると、黒毛和種の枝肉売上額は991,921円(平成26年度)で、褐毛和種の814,292円、日本短角種の593,170円を大きく上回ります。一方、子牛1頭当たりの生産費は黒毛和種が552千円、褐毛和種が537千円、日本短角種が304千円です。黒毛和種は生産費が高いものの、枝肉売上額も高いため、生産者にとっては収益性の高い品種といえます。ただし、黒毛和種では31ヶ月齢以降、枝肉販売価格と生産コストの差額がマイナスとなり収益性が低下することも報告されています。
種雄牛頭数に見る改良基盤の差
品種改良の基盤となる種雄牛の頭数にも大きな差があります。令和6年度の種畜検査結果によると、黒毛和種の種雄牛は1,072頭と圧倒的に多いです。褐毛和種は74頭(高知県21頭・熊本県41頭・北海道5頭・宮城県5頭・岩手県1頭・秋田県1頭)、日本短角種は71頭(岩手県54頭・北海道11頭・青森県3頭・秋田県3頭)です。無角和種に至っては山口県に数頭存在するのみです。種雄牛の頭数差は、そのまま改良のスピードと質の差につながります。黒毛和種は全国的に飼養され、改良が進められてきたのに対し、褐毛和種や日本短角種は飼養地域が限られているため、改良基盤が小さくなっているのです。
- 赤身が多く、適度な脂肪分も含む
- うま味とやわらかさ、ヘルシーさを両立
- 代表銘柄はGI登録の「くまもとあか牛」など
- 低脂肪で、旨味の基になるアミノ酸が豊富
- 放牧による自然交配・粗飼料利用が中心
- 代表銘柄は「いわて短角牛」など
赤身志向で選ぶ和牛の品種
霜降りではなく赤身のうま味を楽しみたい方向けに、品種選びのポイントを整理します。
赤身のうま味なら日本短角種
日本短角種は、低脂肪でうま味の基となるアミノ酸をたっぷり含む赤身の牛肉が特徴です。ルーツは旧南部藩時代に物資輸送等のために飼養されていた日本在来種の南部牛で、昭和32年に日本短角種として登録されました。放牧による自然交配繁殖方式が多く、粗飼料利用性に富み、放牧適性や哺乳能力にも優れます。赤身のヘルシーな肉質でうま味成分が豊富なことから、ヘルシー志向の方や赤身肉のファンに選ばれています。
赤身と適度なサシなら褐毛和種
褐毛和種(あか牛)は、赤身が多く適度な脂肪分も含み、うま味とやわらかさ、ヘルシーさを兼ね備えます。GI「くまもとあか牛」の登録情報では、うま味をもたらす遊離アミノ酸が多く、甘味を呈するグリコーゲンも豊富です。熊本県では阿蘇・矢部・球磨地方で飼われていた在来種とシンメンタール種の交配により改良された固有種で、昭和19年に和牛として登録されました。あか牛の母牛・子牛の頭数は全体で約19,000頭、そのうち約9,000頭が放牧されています。赤身とサシのバランスを楽しみたい方に適した品種です。
希少な赤身を試すなら無角和種
無角和種は、一般に飼育されている黒毛和種に比べて粗飼料の利用性が高く、発育・増体に優れ、「和牛独特の風味を持つ赤身の多いヘルシー牛肉」を特徴とします。霜降りになりにくく、赤身が自慢の肉質です。現在は山口県のみで飼育され、約200頭(和牛全体の0.01%)という極めて希少な存在です。他の品種では味わえない希少な赤身肉を試したい方におすすめです。
黒毛以外の和牛の入手先
ここまで紹介した褐毛和種・日本短角種・無角和種は、どこで買えるのでしょうか。主な入手方法をまとめました。
産地・生産者団体からの直接購入
黒毛以外の和牛は、一般のスーパーではほとんど見かけません。主な入手先は、産地の生産者団体や直売所です。褐毛和種(あか牛)は熊本県畜産農業協同組合連合会やJA高知県、日本短角種はJA新いわてやいわて短角牛、無角和種は無角和種振興公社や山口県阿武町の道の駅などで購入できます。産地直送の通販を利用するのも一つの方法です。
GI(地理的表示)の表示を目印にする方法
品種と産地を保証する仕組みとして、GI(地理的表示)があります。「くまもとあか牛」はGI登録番号67・2018年9月27日登録で、品種=熊本系褐毛和種、肥育期間12ヶ月以上、最長かつ最終飼養地が熊本県内、去勢牛または未経産雌牛、肉質等級が2等級以上(おおむね4等級以下)という基準が定められています。GIマークが付いた商品なら、品種と産地が保証された肉を安心して買えます。
- スーパーの「和牛」はほぼ黒毛和種(和牛の約9割超が黒毛。品種の個性を知るには産直や専門店を頼る)
- 等級は黒毛和種に有利に働く面がある(BMS=サシ重視の評価のため、赤身中心の短角・褐毛は等級で評価されにくいことがある。等級が全てではない)
- 赤身志向なら短角・褐毛を選ぶ(低脂肪で旨味が豊富。霜降りとは別の「肉の味」を楽しめる)
品種と銘柄(ブランド牛)の関係
松阪牛や神戸ビーフなどの銘柄牛と品種の関係を整理しておきます。
銘柄は品種の証明ではない理由
神戸ビーフや松阪牛などの銘柄牛は全国で320種類以上あります。それぞれの銘柄牛には、ブランドを推進する団体が決めた定義があります。重要なのは、銘柄は品種名ではなく、あくまでブランド名であるという点です。同じ銘柄でも、品種や等級、飼育方法の基準は銘柄ごとに異なります。
銘柄ごとに異なる品種・等級の基準
例えばGI「くまもとあか牛」の生産基準は肉質等級2等級以上(おおむね4等級以下)で、褐毛和種の銘柄は等級の高さでなく赤身の質を基準にしています。これは、銘柄が付いていれば高等級の証明になるわけではないことを示しています。銘柄を選ぶときは、どの品種を使い、どんな基準で生産されているのかを確認するのが大切です。
よくある質問(FAQ)
和牛の種類は何種類ですか?
和牛は黒毛和種・褐毛和種・日本短角種・無角和種の4品種です。農林水産省が「和牛は4品種から構成される肉専用種」と定義しています。ただし、飼養頭数では黒毛和種が98.4%を占めており、実際に市場で見かける和牛のほとんどが黒毛和種です。
あか牛は和牛ではないのですか?
あか牛はれっきとした和牛です。あか牛は褐毛和種という和牛4品種のひとつで、1948年から全国和牛登録協会、1952年から日本あか牛登録協会が登録を実施している正式な和牛です。熊本県や高知県を中心に飼養されています。
黒毛和牛と和牛は同じですか?
同じではありません。和牛は4品種の総称で、黒毛和牛(黒毛和種)はそのうちの1品種です。和牛には黒毛和種のほかに、褐毛和種・日本短角種・無角和種が含まれます。ただし、飼養頭数の98.4%を黒毛和種が占めるため、「和牛=黒毛和牛」というイメージが定着しています。
赤身が好きならどの品種ですか?
低脂肪の赤身なら日本短角種、赤身と適度なサシのバランスなら褐毛和種がおすすめです。日本短角種は低脂肪でアミノ酸をたっぷり含む赤身肉、褐毛和種は赤身が多く適度な脂肪分も含みうま味とやわらかさを兼ね備えます。希少な赤身を試すなら無角和種も選択肢です。
なぜ黒毛和種ばかり売られているのですか?
牛肉の輸入自由化以降、消費者の霜降り志向が強まり、肉質で優れる黒毛和種の比率が高くなりました。また、枝肉売上額でも黒毛和種が991,921円(平成26年度)と、褐毛和種の814,292円や日本短角種の593,170円を大きく上回り、生産者にとって収益性の高い品種だからです。
松阪牛や神戸ビーフは品種名ですか?
いいえ、銘柄(ブランド)名です。銘柄牛は全国に320種類以上あり、それぞれブランドを推進する団体が決めた定義があります。品種・等級・飼育方法の基準は銘柄ごとに異なるため、銘柄が付いていれば高等級の証明になるわけではありません。
まとめ
ここまで、和牛4品種の特徴と違いをくわしく解説してきました。和牛は黒毛和種・褐毛和種・日本短角種・無角和種の4品種から構成され、飼養頭数では黒毛和種が98.4%を占めます。しかし、残り3品種は「劣った和牛」ではなく、赤身・放牧・粗飼料利用性という別の評価軸で選ぶべき肉です。褐毛和種は赤身と適度なサシのバランス、日本短角種は低脂肪の赤身、無角和種は希少な赤身と、それぞれに異なる魅力があります。
品種選びのポイントは、「霜降りを楽しむなら黒毛和種、赤身のうま味を楽しむなら褐毛和種・日本短角種・無角和種」という整理です。平均肉質等級では黒毛和種の3.7が最も高いものの、同じBMSナンバーでも品種によって枝肉価格が異なるなど、等級だけでは品種差を語れないことも分かりました。和牛のランク・等級の仕組みについては「和牛のランク・等級」で、黒毛和種の詳細な特徴については「黒毛和牛とは」で、牛肉全体の分類については「肉の種類の完全ガイド」でそれぞれ詳しく解説しています。
スーパーの精肉売り場で和牛を選ぶ際は、ぜひ品種表示にも注目してみてください。黒毛和種以外の品種に出会ったら、それは希少な赤身肉との貴重な出会いかもしれません。
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